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2014年3月4日(火)~7日(金) 東京ビッグサイト

ケーズデンキはがんばらない、「田舎戦略」、駅前目もくれず郊外出店(不況またよし)

 家電量販店四位のケーズホールディングスは二〇〇九年三月期に過去最多の出店に踏み切る。大手小売業が出店抑制に動くなかで時流に逆行する戦略だが、経営方針は「がんばらない」こと。ムリして成長することで生まれるムダを排し、ローコスト経営に徹する。規模では最大手のヤマダ電機の三分の一だが、時価総額は業界二位のエディオンを抜いた。堅実な成長を続けるケーズ流経営術を探った。(3面に社長インタビュー)

 昨年十一月二十八日、JR水戸駅(水戸市)と直結した商業ビルにヤマダ電機の大型店「LABI水戸」が開業した。ケーズ本社から目と鼻の先で挑発的な出店かと思いきや、加藤修一社長は「何度も出店要請が来たけど家賃が高すぎるから断った」と意に介さない。「ビルのテナントが埋まってよかった」とどこ吹く風だ。強がりではなく愚直に郊外の大型店に徹する出店戦略こそケーズの成長力の源泉だ。

 「当社の店は田舎比率が高い」とは店舗開発担当の平本忠専務の弁だ。LABI水戸のようなターミナル立地に店は一つもなくすべて郊外にある。賃料が安く済むためだ。目安とする土地賃料は三・三平方メートル当たり月二千円前後と都心のターミナル立地の相場に比べ十分の一以下。物件により数百円だったり三千円だったりするが「賃借料が高い店の次は安い店を出す」(森田精一開発部長)ことで平均化する。

 出店の初期投資が低く集客が見込めるショッピングセンター(SC)へも原則、出店はしない。賃料が自前で設けた場合の三―五倍と高いためで、全約三百店のうちSC内はわずか三店。売り場面積三千―八千平方メートルと地域最大級の店を出すが、売上高に占める不動産コストの割合は三・三%と業界平均より一ポイント近く低い。ワンフロアの大型店なら建設費や家賃も安く「がんばらなくても客が来て利益が出る」。

 この「田舎戦略」がローコストも導き出す。〇八年四―九月期は連結の売上高販売管理費比率が一八・七%と業界平均より二ポイント低い。関東で店舗展開するケーズ単体の同比率は一〇%未満。郊外ならパート・アルバイトの時給など労働コストも安く済むのだ。

 ケーズは〇九年三月期、前期比二倍の三十九店を出す。期初計画より三店を上積みした。景気悪化が始まった昨秋以降「出店候補地が以前の二―三割増えた」(平本専務)ためで、松下幸之助氏の「不況またよし」に通じる逆張り戦略だ。

 マンション建設や小売業の出店減少で不動産業などからの物件紹介が急増している。例えば三月開業の東京・八王子の店は、家具店の退店に伴い急きょ決まった。

 東北や北関東で地盤を固め、今後は東京都への攻勢を本格化する。その橋頭堡(きょうとうほ)が昨年十二月開業の立川本店(東京・立川市)。売り場面積は約四千五百平方メートルと近隣で最大級だ。東京のベッドタウンに網を張る意味を持つ。既存の稲城若葉台店(稲城市)、多摩ニュータウン店(八王子市)、府中本店(府中市)に立川本店が加わり「チラシの配布地域がつながり効率が高まる」(平本専務)。東京攻略でもローコスト経営の視点は忘れない。

モザイク勤務シフト 人件費を抑制 従業員も楽に

 「従業員を楽にする仕組みを整えている」。拍子抜けするような加藤社長のこの言葉も「がんばらない」経営を表す。

 実はケーズには「早番」「遅番」という小売業で一般的な勤務シフトはない。シフトのパターンは細かく分かれ、現在は四百二十五にも上る。実際に使っているのはこのうち約六十パターンだが、出退が入り組むシフト表はモザイク模様だ。

 例えばある店の場合は、レジに入るパートタイマーは午前九時五十分―午後一時五十分、次の人が一時五十分―五時五十分、次が五時五十分―九時五十分などとそれぞれの人が四時間刻みで勤務する。社員である店長は開店後二時間だけ出勤した後に、四時間ほど中抜けして午後四時に再び出勤する。この店長のいない間だけ副店長が出勤する、といった具合だ。

 最適な人員配置は売り場の大きさや予算、店の構造を考え合わせ曜日や時間帯ごとに導き出す。休憩時間まで考慮したうえで細かく従業員の働く時間を刻むのは「重複して勤務するムダな時間を削る」(清水潔営業推進部部長代理)ためだ。

 管理者である店長の負担も相対的に小さい。店長の管理業務としては、シフトを組むほか店全体の売り上げや粗利を確認するのみだ。

 昨年四月に子会社化したデンコードーは店長が毎日の商品部門別の売上高や粗利を分析し、目標達成の戦略を練っていた。これに対してケーズは「テレビの売り上げが足りなくても冷蔵庫でカバーできたのでオーケー」といった具合。「店長こそ店に出るべき」(清水部長代理)といい、本部が一括して店の業績管理を担当している。

 昨年夏から商品の自動発注も本格導入した。店の売上高や構造に応じた適正在庫を型番ごとに十八パターンに整理し、売れた分だけ本部に発注する仕組みを整えた。少ない人数でも接客ができるよう店のじゅう器を見通しのきく百五十センチ以下に統一している。

 デンコードー(仙台市)がケーズと同じやり方を導入したところ、余剰人員が約三百人も生まれたという。何事もがんばりがちな不況期にかかわらず、肩の力の抜けた社風が余力を生み出す。

ポイントに背、現金値引き シンプル会計、運用負担ゼロ

 「お支払い金額で比べて下さい」。ケーズのチラシにはこんな文言が躍る。業界で一般的なポイント割引に背を向け現金値引きにこだわる。ポイントを受け取った消費者は割引効果を享受するために再び同系列の店で買い物する必要がある。しかし現金値引きは「その場でお得」(ケーズのチラシ)というわけだ。

 本当に支払金額は少ないのか。一月二十六日夕方、東京・府中市にあるケーズ、ヤマダ、コジマ各店の価格を比べてみた。

 売れ筋のシャープの32型の薄型テレビは支払金額はケーズとコジマが同額、ヤマダの支払額は二店より高いがポイントを含めた実質価格は安かった。一方、シャープのブルーレイ・レコーダーはヤマダ、コジマのポイント含む実質価格で比べてもケーズが安かった。

 現金値引きとポイントを併用するヤマダなどはポイント割引を選んだ方が、現金値引きのみを選んだ場合より実質価格は安い。囲い込み効果のあるポイント割引に誘導する目的だ。

 例えばパナソニックの液晶テレビ「TH―37LZ85」は、ケーズで当初十五万八千円だったが値引き交渉すると十三万五千円に下がった。ヤマダは十六万八千円でポイント還元が二八%。実質十二万九百六十円だった。支払金額はケーズが三万三千円安く、実質価格はヤマダの方が約一万四千円安かった。

 ポイントは顧客が環流する効果を生む。使われなければ利益を押し上げる効果もある。ポイントの方が現金値引きのみの場合より色を付けるのは当然といえる。しかし「ポイントは顧客の利便性を損ねる」というのが加藤社長の持論だ。

 ポイントは業界標準だが「次の買い物予定がある人への訴求力は高い一方で、不況で買い物を控える人が増える中では現金値引きの魅力が増す可能性がある」(証券アナリスト)との見方もある。ポイントを導入すれば引当金などの会計処理の手間もかかる。景気悪化で今後、耐久消費財の購入も一段と控える可能性が高い。「がんばらなくても、お客が現金値引きの良さに気づくはず」。加藤社長はあくまで自然体だ。(藤野逸郎)

 ケーズホールディングス 加藤修一社長の父、加藤馨名誉会長が一九四七年に水戸市で創業した。職業軍人だった加藤名誉会長が終戦後、ラジオ販売店を始めたのがきっかけ。松下電器産業(現・パナソニック)の系列店から家電量販店に転換後はコジマ、ヤマダ電機としのぎを削る「YKK」の一角として北関東で地力を養い、同業のギガスや八千代ムセン、デンコードーを傘下に入れ成長してきた。一月二十九日時点の時価総額は約七百二十億円で業界二位。

【図・写真】単一フロアで広々としたケーズデンキ立川本店(東京都立川市)

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