③
体が変わっていく。
バーナビーに変えられていく。
恐いと思っていた心も、体も。曝け出すのも、預けるのも怖くないと、バーナビーが思わせてくれる。
今まで誰かを頼り、任せる側ではなかったから、最初はやはり怖い。
―――それでも、初めてそうしてもいいかと思えた相手こそがバーナビーなのだ。
だから、曝け出す勇気さえあれば、後はバーナビーが受け止めてくれる。
信頼と、愛情と。
与え合う相手がいるというのは、本当にしあわせなことだ。
「虎徹さん、力を抜いて…」
ぐぷぐぷと刺激されていた入り口から一旦、ずるりとバーナビーが指を引き抜く。
「あっ、ああっ」
ひくひくと名残惜しそうに、アナルが蠕動したのが自分でも分かった。
それは勿論バーナビーにも伝わる。
「痛くはありませんか…?」
「い、たくは、ねえ。てか、勝手に、体…」
虎徹は言いにくそうに視線を下げ、もぞりと体を動かした。
「後ろ、その、変、じゃねえ?」
「変?」
「なんか、全然痛くねえし、あー、そのだ、気持ち…いいから…」
伺うように口にすれば、バーナビーが苦しそうな表情を見せた。
どうかしたかと問う前に体をバーナビーの方へ向けられ、唇を荒々しく奪われる。
「んむ!んーっ、ん…っ、は」
息継ぎもろくにさせてもらえない。
舌を擦り合わせ、ぬるい唾液を啜られ、上顎を舌先で弄られてもう頭が真っ白になる。
リングを嵌められたままの両手がぶるぶると震え、快感を逃がせず指がもぞもぞと動いた。
薄目を開けてそんな虎徹の様子を見、バーナビーが更に指を増やし後ろを再び弄る。
大分ほぐれているから、ずん、と突くように指を埋め込んでも痛みはない。
むしろ下腹部に響く衝撃に虎徹はびくんと体を跳ねさせ、目を瞠った。
「んむ、んんん…っ❤」
やばい、気持ち良すぎて堪らない。
そう目で訴えれば、バーナビーが虎徹の汗に濡れた前髪を梳いてくれた。
でもキスは解かれなくて、息継ぎが上手く出来ない。
ぬくぬくと響く水音と、ぬるぬる擦られる舌でもう他の事は何も考えられなかった。
上の口も下の口もびしゃびしゃに刺激され、むず痒い快感が何度も何度も背筋をぞくぞくと這い上る。
じっとしていられず、虎徹は堪らず身を捩った。
これ以上の感覚の先は、本当の未知だ。
何とかしようともがくが、腰を突き出すような姿勢になって余計にバーナビーにずち、と指を深く埋め込まれる。
「っはあ、あ…っ、うんん…っ」
指は単調に中を擦っているだけだ。
たったそれ位の刺激が有り得ないほど気持ちがいい。どうしていいかも分からずにただ溺れるように頭の中が真っ白になっていく。
「ん…っ、うむ、ふあァ」
もどかしい。出したいと思うのに、後ろばかり責められて、どうしても何かが足りない。
無意識に自分で慰めようと両手を伸ばそうとしても、リングがあるから上手く行かない。
飢餓感に虎徹の金色の瞳がぐしゃ、と歪んだ。
「んーっ…んんん!」
声を上げる虎徹にバーナビーは緩く首を振る。
「駄目ですよ。…貴方に、此処で気持ち良くなって欲しいんです」
耳朶を齧られ、唇が肩口に触れる。
「だって、足りな、出してえよ…っ」
「…足りない?」
「足りねえ、だから、前弄らせ、ああっ❤」
肩口を甘く噛み付かれ、がり、と小さな音がした。そのまま横に唇で辿られ、何度も噛まれる。
鍛えていて筋肉も乗っているからか、むしろきつく噛まれた方が気持ちがいい。
「んんん…っ」
虎徹はだらしなく舌を出し、全身に酷く汗を纏わせる。
肉壁がうねうねと指に絡み付き、そっと指を3本まで増やしても虎徹に苦痛の色は見えなかった。
ここまで大分堪えてきたが、バーナビーの我慢もそろそろ限界だった。
血が集まり勃起し切ったペニスはすっかり布地を押し上げ、先端を覗かせる位に育っている。
「虎徹さん…」
「ふあ、な、何」
「此処で、僕のペニスを、受け入れて…?」
「っ」
強張る虎徹に、バーナビーがぎゅっと縋りつく。
「だ、駄目だって、無理、だってまた―――」
「お願いです、虎徹さん。…痛くしてしまった事で、貴方がセックスを避けているのは気が付いていました。でも、僕は貴方をそのままにしたくない」
「バニー…」
「受け入れる貴方に、負担を強いているのは分かっているんです。だからこそ、貴方を気持ち良くしたい。僕との行為を、好きになって欲しい。…僕が欲しいのは、貴方だけだから」
「…」
虎徹は暫くバーナビーを見つめていたが、ややあってはあ、と溜め息をついた。
「…虎徹さん…?」
「…悪かった、バニー。ってか、痛い痛くねえなんてそんなん、俺が我儘なだけじゃねえか」
「違います!貴方がそんな風に思う必要なんて」
「違うって。男だから、次をしたくねえ訳ないって分かってたのに。らしくねえのは俺だよ」
「虎徹さん…」
「逃げたりしねえから、これ外せ。そんで、来いよバニー」
虎徹は果敢にも自分から腿を開き、バーナビーの前に濡れた下肢を曝け出す。
リングを外し、虎徹の頬を撫でれば虎徹もバーナビーを抱き締め返した。
「あー、やっとお前に手が届く。…ごめんなバニー、お前だってこんなになってんのに」
下着を下ろされ、屹立するペニスを軽く扱かれてん、とバーナビーが息を詰める。
「お前のでけえから怖ェことは怖ェけど、…気持ちよかったし、多分、大丈夫」
虎徹はさあどっからでも来いと言わんばかりに体から力を抜き、バーナビーに全てを預けた。
気丈な虎徹も、かすかに震えているのが分かった。
きっとこれが精一杯だ。これ以上の余裕は何処にもない。
その気持ちが嬉しくて、バーナビーはそっと虎徹をうつ伏せにさせ、腰を抱え上げた。
「…後ろからの方が、楽だそうですから」
バーナビーは虎徹の首筋に顔を埋め、指でアナルの縁を緩慢になぞる。ローションで尻の谷間まで濡れそぼっていて、赤いアナルを指で開けばくぱ、と何度もいやらしく口を小さく開けた。
「っ、は、早く、挿れろってバニー!」
ぎゅっと目を瞑って、力を抜こうと何度も浅く息を継ぐ虎徹がいとおしい。
綺麗なラインを描く背中を撫でながらゴムを付ける。そうしてよく慣らした入り口に自分のペニスを宛がうと、バーナビーは興奮を少しでも収めようと長く息を吐いた。
「…挿れ、ます」
じゅくじゅくとカリで入り口を擦れば、途端にうねって中にペニスを誘い込むように動く。
ぷちゅ、ぬぽ、ぐぶぶ、と浅い往復にローションが泡立ち音が上がる。
感じ入っている証拠にああ、と虎徹は溺れるように喉を開き、バーナビーの前で淫らに腰をくねらせた。
ぐちゅん、とそのまま先端だけを埋め込む。
「あ…っ❤んん、んーっ!」
圧迫感よりも圧倒的な快感に虎徹は思わず仰け反る。
一瞬で力のかかった尻たぶを引き寄せ、奥まで押し込みたいのを堪えてカリ首で入り口を散々擦り立てる。
入り口がきつくなければ痛みも大丈夫だろう。
今度はペニスで直接慣らして行く。質量は指とは比べ物にならない筈だが、虎徹の口に苦痛の声は上らなかった。
「あ、ああ、うああ…ァ!あーっ、あーっ!」
シーツをきつく握り締めるのも、感じているこそだった。
痛みではなく歓喜の声を上げる虎徹に、バーナビーはずぽずぽと更に腰を使う。
感じているのだろう、虎徹のペニスもひくひくと震えていた。
あれほど痛がっていたのに、もはやアナルも立派な性器になりつつある。
それが前提で出発点だったから、今のこの虎徹の痴態にぐらぐらと眩暈さえする。
己のペニスがまたびき、と大きさを増した。
「慣れ、ましたか…?」
「あああ、浅、浅いってバニーっ」
囁けば虎徹が身悶えし、咎めるような視線を向けてくる。
虎徹が一瞬で総毛立つのが分かった。
後ろから見ているから、肌が変わる瞬間が分かる。
「虎徹さん、奥に、挿れますね…」
つんと尖る乳首をこりこりと摘んでやり、バーナビーはずぶん、と下生えが入り口にくっつくまで重く押し込む。
「ン…っ、ひい、イ、くぁァァっ!!」
ばちゅ、とローションがぬめり、慣らした肉壁を割り開いてペニスがみっちりと沈む。
虎徹はびくびくと下肢を揺らめかせ、一瞬でがくりと膝を折った。
ばたばたとシーツにザーメンが飛沫き、しとどに虎徹の下を汚す。
達した事に虎徹が驚き、オーガズムの余韻もそこそこに顔色を変える。
「あ…っ、バニィ、バニィ、悪ィ、俺」
「どうして謝るんです…すごく、すごく素敵だ、貴方…」
虎徹の腰を撫で、バーナビーは優しく微笑む。
虎徹はどろどろに溶けた顔をなんとかバーナビーへ向けて、もじ、と腰を揺らした。
「バ、ニィ…なあ」
「…はい?」
「もっと、もっと…良くして、頼む…」
あられもない願いはバーナビーの鼓膜を揺さぶり、脳まで届く。
嬉し過ぎてもう胸が苦しい。
気持ち良くなってくれただけでなく、おねだりまでしてくれるなんて。
本当にこの人は堪らない。
「…分かりました」
手を広げてアナルをぐちりと広げ、捻じ込むようにして尻を犯す。
「ひあああああっ❤んっんっんうう!ひィィ❤」
上がった声に虎徹が口元を抑えようとするが、上から覆い被さってバーナビーが両手を抑えてしまう。
腰を前後にグラインドさせてぬこぬこと中を擦れば虎徹は堪らず身悶えた。
あんなに痛がっていたのが嘘のようだ。
「…すごい、声」
「あうあ、~~~っ、だああ、声、出ちまうんだ、って!」
「…どうしてです?僕の、せい?」
ひくひくと蠕動するアナルをじんわりと掻き混ぜながら、バーナビーは虎徹の耳元に問う。
指に感じる媚肉の味わいは他に例え様がないし、後ろから直接虎徹がペニスを呑み込んでいるのを見るのも絶景だ。
「全部、呑み込んでるの…見えてますよ。ずこずこされてお尻、気持ち良い…?」
わざと卑猥な言葉ばかりを並べれば、虎徹の負けん気にも火が付いたらしい。
負けじとぎゅう、とペニスを締め上げてくる。
「…っ」
「は、ざまあ…」
みろ。
言いかけた虎徹に眉をくっと寄せ、バーナビーが突く角度を変えた。
ぬぽっぬぽっ、ずちゅずちゅ、ぐぽぐぽぐぽぐぽ。
ローションのせいで滑りが良いから、犯す水音も凄い。
「んんっ、んあああァ…っ」
快感はそのまま断続的なオーガズムへと変わる。
「あ!あ、ああっ、うう❤ま、待てっての、ちょ…や、イく、イくって、」
「どうです?気持ち良いでしょう…?」
「はあ…っ、ひ、ああ、ちょ、も」
狭い肉壁を執拗に突き上げされて、ペニスと肉の境目が曖昧になっていく。
内臓まで蕩けてしまいそうだった。
こんなに此処で感じるなんて。
それはきちんと慣らしてくれたバーナビーのおかげでもあるが、それにしたって気持ち良すぎる。
ちかちかと目の前が白くなり始め、虎徹は必死でバーナビーに手を伸ばす。
「…何…?」
「キ、キス…っ、お前、遠いから、」
バーナビーは虎徹の腰を抱え上げ、くったりと自分に凭れかからせる。
「虎徹さん、キスしたいんですか…?」
「うん、ん…!っは、バニィ…む、っく、ふ❤」
堪らなくなったのはバーナビーの方で、虎徹を突き上げながら唇に舌を捻じ込む。
上がる嬌声を呑み込み、ちゅうちゅうと無心で舌を吸い合う。
「あ、う」
「…何です?」
「あっま、ってさ」
「甘い?」
「…お前の、口ん中、甘くって、美味…」
足を割り開き、ばちゅん、と深く挿れて奥をペニスで捏ね回す。
ずぐ、と音がする程奥まで入り込んだペニスに、虎徹は堪らず舌を吐き出してびくびくと極めた。
「~~~っ、あ…イ、あうう…っ❤」
バーナビーの首に縋りついて、虎徹は無意識に腰を使って貪欲に更なる刺激を欲しがる。
あ、あ、と断続的に声を上げながら包まれ、バーナビーもゴム越しにザーメンを吐き出す。
「く、うう、っ…」
腰を抱いてその浅ましい虎徹の姿を見ながら、バーナビーはああ、もうこれでお互いに離れられないな、とぼんやり考えていた。