2014-07-16

思うと、僕の夏には必ず君がいたし、君の夏にも僕がいた。

これからもずっと変わらないと信じていたし、そう思えるくらい、僕たちにとってはごく自然なことであった。

4回目の夏。僕たちは、いつもと同じように、簡易のビーチパラソルを持って近所の砂浜にやってきた。

何をするわけでもない。他愛もない話をして、分けたパピコを食べ、何度も沈む陽を見送っては9月の近づきを嘆いていた。

自分でいうけれど、俺たちよく飽きないよなぁ。」「ほんとにね。」「○○はなんで海が好きなの?」「なんで、っていうか」

空になったベットボトルパピコゴミをまとめながら、彼女はんー、と考える。パラソルの影は、既に随分と伸びていた。

「波に夕陽が当たった時のエメラルドグリーンがとても綺麗だから?」

きしんだ髪も、胸をしめつける潮の匂いも、ざらついたサンダルも、何もかもが愛おしかった。

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5回目の夏を迎える年。彼女が海のない県に引っ越すことになった。彼女の父親は銀行に勤めていたから、きっと転勤だろう。

彼女はいなくなってしまったけれど、受験勉強の合間をぬって僕はしばしば一人で海に向かっていた。

しかしたら、彼女に会えるかもしれない。そう考えている自分に気づいたのは、夏休みに入ってからのことだ。J-POPがヤケに染みたことを覚えている。

特に理由はなかったけれど、彼女とはほとんど連絡をとらなくなっていた。秋口に、引越した先から通える大学を目指すということは聞いていた。

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時が流れるのは早く、僕は地元大学に進むことになった。4月から始めたコンビニバイトにも随分と慣れて、ようやく生活リズムを掴めたと思う。

「無事に大学が決まって、何とか元気に過ごしてるよ。そっちはどう?」というメールが来たのは、6月上旬のこと。

こんなに遅くなったのは、きっと不器用彼女のことだから入学してしばらくは余裕がなかったからだろう。

この夏休みを利用して、こちらに帰ってくるという。「祖父母や友達に会いたいし、パラソルを持って海に行きたいのもある」。

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一年と数ヶ月しか離れていないのに、随分と長い時間が過ぎたように感じる。

彼女が帰ってきたら、小さいエメラルドがあしらわれたネックレスプレゼントしよう。

そして、勇気が出れば告白したい。いやしかし、既に誰かと付き合ってたりするかなぁ。その時はその時で考えよう。

とりあえずはホコリを被ったパラソルを綺麗にして、バイトに精を出したいと思う。

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雨に映えるあじさいを見て、僕は胸の高鳴りを感じずにはいられない。また、暑い夏が来る。

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