川内原発 審査で重視されたのは基準地震動7月16日 4時11分
鹿児島県にある川内原子力発電所は、去年7月以降、62回にわたる審査会合と2度の現地調査が行われ、重視された項目の1つは、想定される地震の揺れの強さを示す「基準地震動」でした。
「基準地震動」は、原発やその周辺で想定される最大の地震の揺れのことです。
審査では、周辺の活断層や地盤などのデータを基に安全を確保するうえでどの程度の基準地震動が妥当か検討され、その結果を基に建物や設備の耐震性が評価されます。
新しい原発の規制基準は地震対策がより厳しく見直されたことから、電力各社はこの基準地震動を決めるにあたり周辺の活断層や地盤などについてより詳しいデータの提出が求められました。九州電力は当初、基準地震動の大きさを東日本大震災前と同じ540ガルで申請しましたが、存在が明らかになっていない活断層による地震の揺れを考慮した見直しを求められ、620ガルに引き上げました。そのうえで、原子炉建屋など重要な施設の配管が揺れに耐えられるよう補強工事を進めています。
自然災害対策では、最大規模の津波を想定する「基準津波」を申請時に比べて引き上げ、原子炉の冷却に必要な海水ポンプを海抜15メートルの防護壁で囲む対策を取ったほか、火山活動への備えについても監視態勢や判断基準を見直し、いずれも了承されました。
また、新しい基準では、すべての電源を失うなどの重大事故が起きた場合にも備え、メルトダウンや格納容器の破損を防ぐための対策を求めています。九州電力は、大型の電源車やポンプ車などを原発の敷地内に配備し、これらを使って原子炉や格納容器を冷却する手順書を作り、現場で習熟訓練を行っています。
審査会合では、こうした対策とともに、適切に対応すればメルトダウンなどを防げるというコンピュータの解析結果を説明しました。審査の過程では、さまざまな項目で対策が不十分だと指摘を受け、大容量のポンプ車の数を3台から4台に増やしたり、対策の拠点となる建物内にガス状の放射性物質が流れ込むのを防ぐための設備を増強したりしました。
規制基準と審査
3年前の福島第一原発の事故を教訓に、去年、原発の新しい規制基準が作られました。新しい基準では、地震や津波などの自然災害への対策をより厳しく見直すよう求めるとともに、従来は電力会社の自主的な取り組みに任されてきた重大事故への対策を初めて義務づけました。
現在、国内に48基ある原子力発電所はすべて運転を停止していて、再稼働させるには電力会社の安全対策がこの規制基準を満たしているか原子力規制委員会の審査を受ける必要があります。審査は、去年7月以降、鹿児島県の川内原発を含め、全国12の原発の合わせて19基が受けています。
規制委員会は、地震や津波といった自然災害をどのくらいの規模で想定するかなどを確認するチームと、設備面の安全対策や深刻な事故への備えを確認するチームを作り、それぞれ公開で審査会合を開いてきました。これまでのところ、去年7月に申請した「加圧水型」と呼ばれるタイプの6つの原発の審査が先行し、このうち川内原発について、規制委員会はことし3月、「地震と津波の想定を含めて安全対策に重大な問題がない」と判断し、優先的に審査する原発に選んでいました。また、福井県にある高浜原発3号機と4号機について、規制委員会は、審査で重視されている「基準地震動」と呼ばれる地震の揺れの想定を従来より引き上げるとした関西電力の説明を了承し、川内原発に続いて審査を進めるとしています。
安全対策に課題は
原発事故の前、日本の規制では、すべての電源を失うなどの重大事故は発生しないという前提に立ち、万が一起きてしまった場合の対策は電力会社の自主性に任せていました。原子力規制委員会は、これを反省し、新しい規制基準では重大事故に備えた対策を義務づけました。
ただ、原発の安全設備の大半が自動的に作動するのに対し、重大事故の対策では作業員が電源車やポンプ車など移動式の機器を手動で動かして対処しなければならないため、人間の判断力や対応力が重要なカギを握ります。このため電力会社は、いざというときに的確な判断や機器の操作ができるよう細かい手順を記した数千ページ以上のマニュアルを整備し、習熟のための訓練をしています。
専門家からは、福島第一原発の事故の教訓を踏まえ、マニュアルにない想定外の事態が起きたときに臨機応変に対応できる力や、緊急時に重要な発電所長の判断力をどのように育成していくかが今後の課題だと指摘されています。
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