新日鉄住金名古屋製鉄所(愛知県東海市)で6月、停電のため黒煙が噴出したトラブルの直後、周辺にあった多数の自動車にすすやタールが付着していたことがわかった。複数の住民から苦情が寄せられたほか、トヨタ自動車が保管していた出荷前の完成車約2万3千台が汚れた。このトラブルで製鉄所の敷地外でまとまった被害が確認されたのは初めて。

 トラブル発生時は風が南から北に吹いており、黒煙は主に製鉄所の北側に流れた。ただ、新日鉄住金によると、東側に広がる住宅地の住民から「車が汚れた」といった苦情が複数寄せられた。同社広報は「具体的な件数は言えない。自宅を訪問するなど個別に対応している」としている。

 一方、トヨタによると、車が汚れる被害が出たのは、輸出向けの約2万台と国内向けの約3千台。黒煙トラブルが起きた6月22日は、製鉄所の北約2~3キロにある一時保管場所2カ所に置かれていた。トヨタ社員のべ約5千人と販売店の社員らが、清掃作業にあたっている。これに伴い、納車に数日~1カ月程度の遅れが出ている。

 トヨタは新日鉄住金に損害賠償を請求する方針。被害状況を調査中で、その結果をもとに請求額を固める。一方、新日鉄住金は「誠意を持って対応する」(広報)としている。

 名古屋製鉄所のトラブルでは、電力を供給する四つの自家発電設備の一つが異常電流の発生で自動停止。過度の負荷がかかった残り3設備も止まり、大規模停電になった。その結果、コークス炉内にガスがたまり、黒煙が噴出した。(大内奏)