鳴沢大
2014年7月16日13時49分
電子楽器最大手のローランド(浜松市、東証一部)が上場廃止を目的に始めた経営陣による自社株の買い取り(MBO)期間が14日終了した。取得した株は全体の82・92%。この結果、今秋にも上場廃止となる。米国のファンドの支援を受けてのMBOをめぐっては、ローランド創業者の梯(かけはし)郁太郎氏(84)と会社側が真っ向から対立。「攻防」は最後まで続いた。
■株主総会で質疑2時間
「悪辣(あくらつ)な乗っ取りだ」
6月27日午前、JR浜松駅前の百貨店ホール。梯氏の声がマイク越しに響き渡った。ローランドの株主総会での一コマだ。
梯氏は「よりによって米国ファンドとは」と、車いすから立ち上がり、ファンドの介入を批判。対する三木純一社長は「乗っ取り」批判に強く反論した。「これまで現経営陣の排除もない」と答えたが、きしむやり取りは平行線が続いた。
ローランドによると、ファンドと共同したMBOはローランド側が打診。成立後はファンド側の人間も経営陣に入る予定だ。ただ、これには他の株主も疑問の声を上げ、株主側との質疑は約2時間に及んだ。
■米ファンドと経営再建
ローランドはここ数年、業績が低迷。「改革にスピード感を」と、創業から43年目、東証一部上場から16年目に選んだのは、ファンドと共同して進める非上場化と経営再建だった。提携相手は米国の投資ファンド、タイヨウ・パシフィック・パートナーズ。日本で約45社に投資し、ローランド株は7年間所有する。
同ファンドのブライアン・ヘイウッドCEOは日本語が堪能。ふんどしも締める親日家で友好的な機関投資家を標榜(ひょうぼう)する。
経営再建のための大胆なリストラは両刃の剣だ。ローランドは「上場だと株主に迷惑をかける」との立場。情報開示義務や株主代表訴訟リスクを伴う点も重荷と判断したようだ。
今回のMBOでは、株主を株売却に導く出来事もあった。子会社「ローランドDG」の株の一部売却だ。
印刷業のDG社は好業績で連結決算の「稼ぎ頭」。ローランドはDG社株の40%を保有するが、半分を売却。今年度の第2四半期に連結対象から外れた。その分業績が悪化するため、MBO不成立により上場廃止ができなければ、株価下落のリスクを招く。一方でローランドはMBOでの買い取り価格に色を付けた。期間中に売った方がリスクは低く、投資家の判断に影響した可能性もある。
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