W杯の高視聴率は、アイドルのおかげ?

米国のサッカー番組を見て思う、日本のガラパゴス事情

まずひとつめは、テレビ局の担当者が、アイドルやタレントを起用すると「視聴率が上がる」と思い込んでいるのではと推察します。ワールドカップの放映権料は莫大。アメリカのESPNはブラジル大会の放映権料として1局で100億円を支払っていますから、NHKと民放のコンソーシアムがどれだけ支払っているか、想像できると思います。

こんなに高い放映権料の元を取るには、記録的な視聴率の獲得は必須です。そこで、考えたのが、サッカーのコアファンではない視聴者の取り込み、特に女性層の獲得ではないかと思います。MCをアイドルにして……という発想はここからきているのではと。

ところが残念ながら、MCをアイドルにしたところで視聴率には大きく影響しません。W杯の視聴率は放送時間帯×試合の重要度(これを勝てば決勝進出など)でほぼ決まります。

また、ビデオリサーチによれば関東地区の視聴率を1%上げるには、およそ41万人、関西地区では16万人もの視聴者を獲得しなくてはならないのです。どんなに人気アイドルでもひとりの力でこんなに多くの視聴者を新たに呼び込めません。アイドルのファンはとても熱心に、電話をしたり、メールを送ったりするため、その濃い反応にテレビ局側は視聴者が増えたような感覚に陥りますが、そうしたファンの数は限られていて、視聴率にはそんなに反映されていないというのが実情です。AKB48の方々が単体で出演する番組がそんなに高い視聴率を獲得しないのも同じ理由からです。

2つめは、「NHKと差別化しなければ」という健全な向上心から、こういう特殊なキャスティングが始まったのではないかと思います。NHKは局のスポーツ専門のアナウンサーと解説者をそろえて、完璧な放送をしますから、NHKと同じような放送をしても民放で放送する意味がなくなってしまいます。

これは極めてまっとうな戦略ですし、視聴者としても、NHKでは見られないような面白いサッカー中継を見せてくれるのであれば大歓迎です。ところが、差別化をあまりにもキャスティングに頼ってしまったために、欧米人から不思議がられる結果になってしまいました。

サッカー中継は、当然のことながら、サッカーを生放送で伝えるためのもの。スタジオでのつなぎは、ステーキの付け合わせのニンジンのようなもの。このニンジンをアイドル風味やお笑い風味にして、一生懸命おいしくしようとしても、肝心のステーキを引き立ててくれなければ意味がありません。

タレントさんたちも、一生懸命やっているのは伝わるのですが、視聴者としては「なぜこの人が?」感はぬぐえない。日本代表が好調ならまだしも、ドローで終わったり精彩を欠いたりしていると、さらにその矛先は出演者に……。ネット上などで多くのサッカーファンからクレームを受けることになってしまい、キャスティングされたタレントさんにとってもマイナスの結果となってしまいました。「餅は餅屋」と言いますが、やはりアイドルはステージ上で輝いていてほしいものです。

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