ドイツの優勝に終わったワールドカップ決勝の直後、メッシが大会最優秀選手に選ばれたことに違和感を持った人は多いと思う。
グループリーグでは3戦連続でゴールを決め、スイス戦でも決勝点をアシストしたものの、準々決勝と準決勝は共に不発。決勝でも数度のチャンスを手にしながらゴールに結びつけられなかったメッシと比べれば、ロッベンやハメス・ロドリゲスなどの方が大会を通して強烈なインパクトを残した。
何よりアルゼンチンには、メッシよりも際立っていた選手がいたではないか。
「マスチェラーノは別格だ。アルゼンチンはマスチェラーノとその他10人だと4年前に私が言った際、みな笑っていた。だがもう笑うことはできまい」
準決勝オランダ戦の後、そう言って胸を張ったのはテレビのコメンテーターを務めていたマラドーナだ。彼の言う通り、今大会のアルゼンチンはメッシのチームではなく、マスチェラーノのチームだった。
攻守にマスチェラーノの傑出度を示すデータが。
ピッチ内の彼がどれだけ攻守に欠かせない存在であるかは、データを見るだけでよく分かる。マイボール時はパスが苦手なセンターバックをフォローすべく最終ラインに下がり、ビルドアップの起点となったことで、パス本数は準決勝終了時点で大会トップの509本、しかも成功率は90%に上った。
そして守備時は持ち前の機動力とプレーを読む眼を駆使してボール奪取に奔走し、やはり準決勝までに大会最多の28タックルを記録。その1つ、準決勝オランダ戦の91分にロッベンのシュートをブロックした矢のようなスライディングタックルがなければ、アルゼンチンがマラカナンの決勝に辿り着くことはなかった。
「肛門が開いてしまって……。下品な話でごめん。でもすごく痛かったのはそのせいなんだ」
そのタックルを行なった直後、苦痛に顔を歪めてなかなか立ち上がれなかった理由について、試合後マスチェラーノは恥ずかしそうにそう説明していた。誰よりも謙虚で献身的な“ヘフェシート(小さなボス)”の偉大さを象徴するエピソードである。
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