イスラエルのネタニヤフ政権と、パレスチナのガザを支配するイスラム組織ハマスとの間で紛争が激化している。

 14日までの約1週間で、死者は180人を超えた。そのすべてがパレスチナ人だ。

 力の差が歴然とした非対称の戦場で、イスラエルは空爆や特殊部隊による作戦を続け、本格的な地上侵攻の構えも見せる。ハマスもロケット弾攻撃で対抗し、暴力の連鎖はとどまるところを知らない。

 中東では今、イラクが分裂の危機にさらされている。秩序の崩壊を避けるために、それぞれの国や勢力が妥協を重ね、協力を模索すべき時である。

 イスラエル、パレスチナ双方とも自制し、即刻停戦して現実的な話し合いに入るべきだ。

 今回の紛争の発端は、イスラエル人の少年3人が6月に行方不明になり、遺体で発見された事件だった。7月には逆にパレスチナ少年が誘拐、殺害され、対立がエスカレートした。

 悲惨な事件だが、本来は司法の場で解決すべきことだ。なのに武力のぶつかり合いになった背景には、これまで繰り返されてきた紛争と、その間に積み重なった相互の不信感がある。

 08~09年にもイスラエル軍がガザに侵攻し、1300人超の死者が出た。その二の舞いは避けなければならない。

 ネタニヤフ政権もハマスも、内部にさらに強硬な勢力を抱えている。互いに譲らない一因は、内部の強硬派の不満を恐れるからだといわれる。そこに、多数の人命を犠牲にする大義は見いだせない。

 ハマスは、周辺諸国の政変や危機に伴って、主要な支援国だったシリアやイラン、エジプトと対立するようになり、財政的に弱体化した。ネタニヤフ政権も、長年対立してきたイランが欧米に歩み寄りを見せるようになったことから、孤立感を味わっている。

 ともに、長期の紛争を戦い抜く態勢にはない。国際テロ組織アルカイダ系の勢力が力を持つのを防ぎたい点では、利害も共通している。そこを、妥協の糸口にできないか。

 エジプト政府が停戦案を示すなど、仲介の試みは生まれている。ただ、アラブ諸国の多くは内紛を抱え、動きが鈍い。ここは、米国がもっと中心的な役割を果たすべきだ。

 イスラエルとパレスチナの間で米国が仲介した和平交渉はこの春に頓挫したままだ。憎悪と暴力の応酬を抜け出す道筋は見いだせないのか。当事者たちの真剣な努力を促したい。