ボードゲームを通して知的戦略を育むレシピ
更新日時:5時間 前 【レシピ】地頭を育てる
0 12時間 前

ボードゲームは東日本大震災の後、関心を持つ人が増えているという。電気を使わずに遊べるので節電につながること、家族や身近な人との交流を深めたいという人が増えたことなどが背景だ。(中略)世界各国に様々なボードゲームがあり、欧州では毎年500もの新作が出るという。海外製品の多くは日本のゲーム専門店などがメーカーに日本語訳した解説書を付けてもらい輸入・販売している。ゲームの難易度は様々で、よく調べたうえで購入するほうがよい。

(引用元:日本経済新聞記事

 

というわけで今回は、デジタルゲームばかりのお子さんに、たまにはアナログゲームの魅力を知ってもらうレシピをご紹介します!

知的ジレンマに苦しめられたり、相手を出し抜いたり、うまくできたボードゲームというのは対面コミュニケーションの中で純粋に知略を競い合えるように作られているものです。

ネットとスマホの普及した今だからこそ、相対するプレーヤーの目の奥に潜む思惑を嗅ぎ取る力、を養う意義は大きいのではないでしょうか。

とはいえそんなたいそうなモノばかりではなく、手軽に盛り上がる割に奥が深い、という楽しいゲームも多くあります。

日本ではあまりなじみがありませんが、パーティーゲームからじっくり沈思するゲームまで様々なラインナップがあります。

 

たまに人が集まったときに盛り上がるゲームから始めて、徐々に深い思考が要求されるゲームにスライドしていくレシピに仕立てました。夏休みの夜に是非どうぞ!

※尚、レシピの著者は全てプレイした上でさらに厳選してオススメしております

【入門編】

ニムト!

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このゲームの素晴らしいところは何よりプレイ人数が幅広く、やることはめちゃくちゃ簡単なのに読み合いがモノを言う、というその絶妙なゲームバランスにあります。

 

2人から10人までプレイできるため、人数が合わなくてプレイできない、ということはまずありません。(4人以上を強くオススメします)

 

操作もとっても簡単です。カードをひとり10枚配ってせえの!でいっしょに出すだけ。それを10回繰り返して終わりです。小さい子どもでも大丈夫です。

 

後は出されたカードをルールに沿って並べて行くだけ。そして自分の出したカードが6枚目になってしまうとアウト!となります。その列のカードに書かれた牛の数だけマイナス点が入るのです。

 

なるべくカードを取らないようにみんな工夫して出すんですが互いの読み合いで計算が狂うこともしばしば。なのにうまい人は一枚も取らずにゲームが済んでしまうという絶妙のゲーム設計。

 

しかもどうやら、単に「たくさん考えているか」というよりは、「直感のようなもの」も左右しているようですし、思慮深いプレーヤーに限って毎度定規で測ったように同じ傾向を見せるので読みやすかったり、あえてカードを取りに行ってダメージを最小限に収めたり、と単純なルールながら奥深い作りです。

 

カードゲームの入門編としては最適でとっても盛り上がりやすいゲームなので、トランプ以外にカードゲームをやったことない、という人にもピッタリです。

(余談ですがこのゲームは大人もハマりやすく、一度プレイすると自分でもやってみたくて買う人が続出する傾向があります)

一回のゲームが20分くらいで終わりますし、声を大にしてオススメできるゲームです。

※よく見るとペナルティの牛の数は素数の倍数に応じて点数が加算されていたりと、ニヤッとしてしまう作りも素敵です。

 

【入門編2】

ごきぶりポーカー!

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このゲーム、一時期テレビ番組でも紹介されたりと知名度が高いので知っている人も多いのではないでしょうか。

登場するカードはコウモリ、蝿、ネズミ、ゴキブリ、カエル、蜘蛛、カメムシ、と世界的にも嫌われ者ばかり。このカードを押し付け合ってたくさん押し付けられた人の負け、というゲーム。

秀逸なのはやはりその単純ながらたくさんのジレンマを生み出す押し付けルール。

 

簡単に説明します。

スタートプレーヤーは誰か好きな人を選んでどれでも好きなカードを渡しながら、こう宣言します。

 

「これはカエルです」

(押し付けられている方は何のカードか知りません)

 

しかし、押し付けるプレーヤーはこの宣言のタイミングで嘘がつけます。ゴキブリをカエルだと宣言してもいいし、本当にカエルをカエルだと宣言しても構いません。

 

そして、押し付けられたあなたはこの宣言に対して勝負を受けるかどうか選ぶことが出来ます。

 

・勝負を受ける場合→その宣言が本当か嘘か見破らなければいけません

・勝負を逃げる場合→そのカードを見ていい代わりに、次にあなたが誰かに押し付けなければなりません

 

さて、このルール、一見勝負を逃げた方が得策のようにも見えますが実はそうでもないんです。

次に押し付ける側となったあなたはそのカードを誰かに押し付けながら嘘をつかなければいけない。

運良く相手が勝負に乗ってきて、しかも外してくれればいいんですが、もし見破られた場合、そのカードは返り討ちにされたあなたに押し付けられてしまいます。

同じ種類のカードを4枚押し付けられたら負け、というこのゲーム。

たったこれだけのルールで説明し切ってしまうにもかかわらず、たくさんのジレンマが発生します。

 

・もしあなたが3枚のゴキブリを押し付けられた状態でさらにゴキブリのカードを押し付けられたら負けてしまう恐れが出てきます。故にゴキブリのカードを出すことはやめたほうがいいでしょう。

・であればあながもし2枚のゴキブリを押し付けられていたときにもゴキブリのカードを出したら負けにリーチがかかってしまう恐れが出てきます。従ってこの場合もゴキブリのカードを出すことはやめたほうがいいかもしれません。

・であれば1枚でもゴキブリを押し付けられているあなたにはゴキブリが回ってくる可能性が高いのではないか?

・であればゴキブリを持っている相手にゴキブリと宣言しながらカエルなんかを出せば必ず相手は安全をとって…

 

このように読み合いが始まりますが、ようく見ているとカードを見た瞬間のリアクションでバレバレなプレーヤーもちらほら。

 

顔色から心理を読む要素が入ってくるためブラフ、ハッタリ、偽のリアクション等戦略の幅がとっても広がるのです。

だからごきぶり「ポーカー」なんですね。

 

【中級編】

ブラフ!

さてさて心理戦の要素を楽しみながら確率の勉強もできるのがこちら、ブラフ!

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3人以上6人までが楽しいこのゲームはサイコロを使った確率の概念を多用します。

 

プレーヤーは自分に与えられた「ライフ」でもあり「唯一の武器」でもあるサイコロを5つ渡されます。これを死守するのが目的です。

 

このゲームもやり方は簡単。みなで一斉にサイコロを振りますが、自分のサイコロしか見ることはできません。つまり、4人でやった場合、場には4×5で20個のサイコロがありますが、その中で出た目がわかるのは自分の持っている5個分のみなのです。

 

プレーヤーたちはそんな限られた情報の中から、「この20個のサイコロのうち、○の目が少なくとも×個ある」という宣言をしなくてはなりません。

と、いうときに頼りに出来るのは何でしょうか?

 

そうです。「期待値」なんです。

 

サイコロを20個振ったときに例えば2が出ている個数の期待値は20÷6で約3.3個。であれば「少なくとも3個ある」なら言ってもいいかもしれません。違和感は無い。

 

しかしそこにあなただけが持っている5つのサイコロの情報が効いてきます。そうです。もし自分のサイコロに2が5つ出ていればその分あなたは他のプレーヤーを出し抜く宣言ができるのです。

 

しかしその宣言は他のプレーヤーに予想され織り込まれるかもしれません。「やけに強気なあなたは2がたくさん出ているだろう」と。

 

ん?でもそれはしかしブラフかもしれない。

 

こうした読み合いの中、宣言は時計回りにめぐってきますが、条件を緩くすることはできません。

どこかで「そんなにたくさん2が出ている訳が無い!」と思える瞬間が来てしまうのです。

 

そう思ったプレーヤーは前のプレーヤーに対して「ダウト!」勝負を仕掛けます。

 

全てのサイコロをオープンして個数を数えますが、

・実際に宣言通りのサイコロがあった場合→ダウトと言ったプレーヤーのサイコロが没収。

・逆に宣言の数だけサイコロが満たなかった場合→大ボラを吹いたとして宣言したプレーヤーがサイコロを没収。

 

サイコロを失ったプレーヤーはその分だけ情報を失いジリ貧になっていきますが、勝負の終盤はみな満身創痍。シビアな読みが要求される勝負へと様相が変わって行くのです。

 

このゲームは「期待値」という概念を理解していないと勝負になりません。こういった形で高次の概念を体感する、「とても質の高い学習教材」とも言えますね。

 

【知育編】

ワードバスケット!

知育教材、ということで少し趣向を変えて国産のカードゲームを紹介します。

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このゲームは問答無用で語彙力を問う、まさにひらめきと脳内に蓄積した名詞の数を競うゲームです。

基本はしりとりなのですが、箱の中の文字で始まり、自分の持ってる文字で終わる3文字以上の単語、を思いつけばいつ何枚でも出していいというルールです。

 

やってみるとこれが意外と難しい。

 

例えば場に「か」が出ていて自分が「も」「け」「ら」なんていうカードを持っている場合を考えてみてください。

 

「か」から始まって「も」or「け」or「ら」で終わる3文字以上の単語、すぐに思いつけますか?

 

ちなみに筆者はやっとのことでカルガモ、を思いつくのが精一杯でした…。

 

シンプルですが意外と思いつかないこのゲーム。脳みそを絞りたいときに是非どうぞ!

 

【上級編】

さて、ここまでのゲームは人数にもよりますが20分からせいぜい1時間で終わるゲームばかりでした。

 

しかしボードゲームの中にはルールを理解するのに気合いを入れてかからなければならないゲームも存在します。

 

が、そういったゲームにはルールを覚えるのに用いた苦労の分だけ奥深いゲームもまた多いのです。

 

ご紹介します。

 

カタン!

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ドイツゲームが日本で流行する先駆けともなったゲームです。

ゲームバランス、交渉の妙、外観、知略の奥深さ、どれをとっても一級品で、ハマってしまうと次にやるタイミングが楽しみになること請け合いです。

 

プレーヤーは4人が最もオススメです。3人、5人でも楽しめます。

 

海に囲まれた無人の楽園カタン島。ここに流れ着いた開拓者たちは新天地を作り始めました。島の土地から資源を集め、街道や開拓地を作って島中に広がっていきます。誰が一番早く自分の国を完成させることができるでしょうか?

このゲームではサイコロを振って出た目に応じて資源が産出されます。その限りある資源を活用して道路や街を建設しなければいけないのですが、そもそも運良く資源が産出された街にたまたま自分の街が無いといけません。

 

と、いうことは、限りある資源をいかに自分の手中に収めるか、という戦略が無いと戦えないのです。

 

プレーヤーはいつでも資源の交換を他のプレーヤーに持ちかけることが出来ますが、相手の欲しい物を持っていないと交渉は成り立ちませんよね。

ではどうやって効率よく資源を入手するか?木材を狙うべきか?石を狙うべきか?はたまた港を抑えて島の外と交易を行うか?

または何かの資源の独占を狙って街を抑えてしまうのもよいかもしれません。もし成功すれば常に交渉に有利に立ち続けられるでしょう。その傍らで盗賊からの資源奪取には気をつけてください。

 

程よく運の要素も加味されているため先行きは予測困難です。

ルールを理解するのにはある程度の年齢と時間が必要ですが、大人も魅了されるその奥深さを見せることが出来れば虜になること間違い無し。

戦略、先読み、臨機応変な対応、交渉術など、鋭い頭の動きが必要なゲームです。

 

さて、いかがだったでしょうか。

 

日本でボードゲームというと人生ゲーム等が一般的ですが、これは特に他人との争いも無く、運の要素が非常に強いように思います。話題を提供するには良いですが「知略」はあまり関係ありません。

 

ボードゲームの醍醐味は同時にプレーする相手との「駆け引き」と「ジレンマ」です。

あちらを立てればこちらが立たず、戦略レベル1を採った際に相手のプレーはどうなるだろうか?戦略レベル2だとどうか?

こうした二手、三手先を読む力が自然と養えるボードゲームで子どもとあっと驚く頭脳プレーを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

難しい部分や他にこんなゲーム無いの?こんなゲームもあるよ!といったアドバイスやリクエストも是非どうぞ!


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