新刊書籍『大坊珈琲店』(大坊勝次)7月中旬発売
南青山に、38年間自家焙煎とネルドリップというスタイルを変えずに、 コーヒーを作りつづけた喫茶店「大坊珈琲店」があった
そんな帯をまとって、2013年末に建物取り壊しのため幕を閉じた大坊珈琲店の本が発売されます。
オリジナルは閉店時に限定千部のみつくられた私家本。猿山修さんが装丁を手がけた箱入り・布張り・箔押しの贅沢で美しい造りの2冊組で、店主の大坊勝次さんご自身が綴られた「大坊珈琲店のマニュアル」、写真家・関戸勇さんによる店内のあらゆる写真、大坊珈琲店に縁のあった35人の寄稿文がおさめられていました。
この私家版が瞬く間に売り切れてしまったらしく、「もう手に入らないのですか?」の声に応えて、誠文堂新光社から2014年7月中旬に新装版が発売されることになりました。
新しい本は2冊組を1冊にまとめつつ、私家本のまとっていた大坊珈琲店にふさわしい品格をたっぷりと引き継いでいます。
大坊マスターが綴られたページは、象牙色の紙に活版印刷! この紙と文字のえもいわれぬ趣が、大坊珈琲店の反り返った一枚板のカウンターで飲んだ深煎りの味わいを呼び起こしてくれるようです。
お人柄がにじみ出るマスターの文章は味わい深く、静かな余韻がどこまでも長く続きます。そう、あの珈琲と言葉とは、完全に一体化しているのです。
上の見開きページにおさめられた写真は、1975年7月の開店前に配ったというカード。2013年12月にもここに書かれた通りの姿であったことに驚かされます。
大坊珈琲店は十坪とちょっとの広さです。
お客さまお一人お一人に丹精こめた手づくりの珈琲を……と念願する私にとってこれが理想の広さです。カウンターに十二人様、テーブルに八人様。兵庫県多聞町小東山永田良介商店より取り寄せました家具は椅子が少々堅いのですが格別の坐り心地です。ポールデスモンドなど落着いたジャズを程々に音をしぼって流します。日暮れより後にはウィスキーもお楽しみいただこうと存じます。
このあとに続く文章は、つまり「大坊珈琲店のつくりかた」。そうそう、私はここが好きだったんだと嬉しくなる点もあれば、ああ、マスターはこんなことを考えていらしたんだなと、今になってしみじみとわかる点もあります。珈琲店という場を愛する方々に、ぜひお読みいただきたいと思います。
【寄稿者】
佐藤隆介/永六輔/矢崎泰久/武部守晃/葉山葉
小林庸浩/十文字美信/長谷川櫂/天児牛大
糸井重里/平松洋子/杉山英昭/嶋中労/門上武司
小川幸子/川口葉子/五十嵐郁雄/鳥目散帰山人
横山秀樹/升たか/遊佐孝雄/本多啓彰/渋澤文明
立花英久/立花文穂/切明浩志/岡戸敏幸/金憲鎬
芦澤龍夫/沖本奈津美/長沼慎吾/清田大志
金恵貞/大野慶人/小沢征爾
私が寄稿させていただいた散文詩は、「シンプルな言葉遊びの制約の中でどれだけ真実を綴れるか」をテーマにしていたのですが、その言葉遊び――行の頭の音だけを読んでいくと「だいぼうこおひいてん」になる、ということに気づいてくれた人は少なかったようです。
『大坊珈琲店』 大坊勝次
誠文堂新光社
2014年7月18日発売 (3000円+税)
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