韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は15日、社会副首相兼教育相に内定していた金明洙(キム・ミョンス)氏の指名を撤回した。同氏が過去に論文を盗作した疑惑が浮上しているためだ。首相候補が二人連続で辞退したのに続く人事の失敗となる。30日に国会議員の再・補選を控え、与党内でも朴政権への批判が噴出する可能性がある。
大統領府が明らかにした。金氏は学者で韓国教育学会会長。指導していた学生の修士論文を盗作したり、同じ論文を複数の学術誌に投稿したりしたと指摘されている。9日の国会での人事聴聞会でも批判を受けていた。大統領は金氏に代わり与党セヌリ党の黄祐呂(ファン・ウヨ)前党代表を指名した。
多くの高校生が犠牲になった旅客船セウォル号沈没事故を受け、朴大統領は安全管理を強化するために国家を改造すると宣言。中央省庁の再編策と共に内閣改造を表明したが、指名候補の不祥事が相次ぎ発覚している。
韓国メディアは文化体育観光相候補の鄭成根(チョン・ソングン)氏と安全行政相候補の鄭宗燮(チョン・ジョンソプ)氏に対しても連日、不祥事の疑惑を報じている。朴大統領は国会同意がなくても閣僚を任命することができるが、野党の反発は必至と見られ、内閣改造に不透明感が強まっている。
大統領が指名後に候補者の過去の問題点が次々に報じられているため、過去の言動の事前調査が不十分との指摘も多い。こうした批判を受けて大統領府は人事担当首席秘書官の新設を決め、15日に人事に通じた元官僚を任命した。
朴大統領はセウォル号事故発生と人事の失敗で評価を大きく落としている。民間調査会社ギャラップが11日に発表した7月第2週の支持率は43%。就任以来の最低値をつけた前の週よりは小幅改善したものの、不支持率が48%と、4週連続で支持率を上回った。
30日には国会議員の再選挙と補欠選挙が控える。14日のセヌリ党党代表選では、朴大統領の側近が敗れ、金武星(キム・ムソン)氏が選ばれた。与党はこれまで大統領に協調的な立場を維持してきたが、このままでは補選に勝てないと判断する可能性がある。与党が政権との対立姿勢を打ち出し、朴政権のレームダック化が進むとの見方もある。
朴政権の指導力低下は日韓関係にも悪影響を与えかねない。領土や歴史問題で妥協すれば国内で批判が高まるのは避けられないため、日本に対してこれまで以上に強硬になる恐れがある。(ソウル=小倉健太郎)