拉致問題:米、安倍首相の訪朝けん制 事前の相談要求
毎日新聞 2014年07月16日 07時15分(最終更新 07月16日 10時17分)
米国のケリー国務長官が7日、岸田文雄外相と電話で協議した際、日本人拉致問題の進展を目指し、安倍晋三首相が北朝鮮を訪問する場合に言及し、「日米韓3カ国の連携が乱れかねない」との懸念を伝えていたことが分かった。
北朝鮮に対する日本の制裁解除に関し、米韓両国から懸念の声が上がっており、拉致問題の解決を急ぐ日本の動きが前のめりにならないよう、けん制したとみられる。複数の政府関係者が15日、明らかにした。
ケリー氏と岸田氏との電話協議は7日深夜から約40分間行われた。関係者によると、ケリー氏は岸田氏に対し「日米は同盟国だ。北朝鮮との交渉については透明性をもって、事前にきちんと相談してほしい」と要求。
その上で「首相が訪朝することを検討する場合についても、事前通告ではなく、きちんと相談してほしい」と求めた。
首相訪朝を巡り、岸田氏は6月3日の参院外交防衛委員会で「成果を上げるために最も効果的な方法が何であるか。その中で訪朝についても考えていく」と前向きな答弁をしている。岸田氏はケリー氏に対し、「マスコミが答弁内容を解釈して報じただけで、首相訪朝は一切検討していない」と釈明したという。
北朝鮮は6月29日以降、弾道ミサイルの発射を続けている。米側は北朝鮮の核・ミサイル開発に対する警戒感を強める一方、日米韓3カ国の足並みの乱れを懸念。ケリー氏は岸田氏に直接懸念を伝えることで、米側の不快感を示したものとみられる。
岸田氏は電話協議で、北朝鮮の弾道ミサイル発射について、「核・ミサイル問題に対する日本の断固とした立場は不変だ。日朝協議でも北朝鮮に自制と国連安全保障理事会決議などの順守を求めた」と理解を求めた。
しかし、首相は電話協議後の13日、ミサイル発射に関し「拉致問題の解決に向けた取り組みに影響を及ぼすことはない。拉致問題は拉致問題として、解決に向けて取り組んでいきたい」と記者団に強調。米側の日本に対する不信感が一層強まる可能性もある。【福岡静哉】