広島原爆資料館:被爆ブラウス、遺族の妹が寄贈
毎日新聞 2014年07月15日 23時08分
広島原爆で被爆し、9日後に亡くなった下久保喜久代さん(当時23歳)の遺品のブラウスが15日、広島市の原爆資料館に寄贈された。寄贈者で妹の萩本トミ子さん(89)=広島県廿日市市=は「自慢の優しい姉だった。戦争が無ければ、姉は幸せな人生を送っていたと思います」と亡き姉をしのんだ。
喜久代さんは1945年8月6日、爆心から約700メートルで被爆。翌7日の明け方、捜しにきたトミ子さんや父駒一さん(故人)らに発見され、リヤカーで実家に運ばれた。頭から血を流し、片耳がちぎれる大けがだったという。
トミ子さんらの必死の看病もかなわず、同15日午前、終戦の玉音放送を聞く前に息を引き取った。新婚だった喜久代さんは死ぬ間際まで、原爆投下後に行方が分からなくなった軍人の夫(当時29歳)を気にかけていたという。
喜久代さんが被爆時に身に着けていたブラウスは、裁縫が得意なトミ子さんが自身のワンピースを仕立て直し、喜久代さんの結婚の際にプレゼントしたもの。真っ白だったブラウスは肩部分が裂け、血で赤く染まっている。母マキさん(故人)が何度洗っても、喜久代さんの血の色は落ちなかったという。
トミ子さんは「昨日も姉のブラウスを抱いて寝た。名残惜しいが、戦争の悲惨さ、二度とあってはならないということを伝えたい」と話した。【目野創】