7月3日付 自衛権閣議決定(下) 主権者軽視とは何事か
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政府はきのう、集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈変更の閣議決定を踏まえ、自衛隊の任務拡大に向けた具体的な法整備の準備を本格化させた。
関連法は、自衛隊法や国連平和維持活動(PKO)協力法の改正案など10本以上が想定されており、秋の臨時国会以降の提出を目指している。集団的自衛権の行使容認は戦後安全保障政策の大転換であるにもかかわらず、自民、公明両党によるわずか1カ月半の協議で決められた。
閣議決定に至るまでの議論は、これまでにも拙速で説明が不十分だと指摘してきた。与野党は、国会審議を通じて国民を巻き込んだ議論を展開しなければならない。
特に民主党をはじめとする野党は、チェック機能を十分に果たすべきである。非難の応酬をするのではなく、冷静かつ論理的に与党協議の欺瞞や曖昧さを追及して、解釈改憲にブレーキをかけてもらいたい。
一方の与党には、秋の臨時国会は武力攻撃に至らないグレーゾーン事態対処の法改正などを優先し、国会審議が紛糾する可能性が高い集団的自衛権の関連法案については来年春の統一地方選以降とする思惑があるようだ。
こうした考えは、国民を軽視するものだ。国民は丁寧な説明を求めている。真摯に審議に臨むべきである。議場での数を頼んだごり押しは、見たくはない。
安倍晋三首相が憲法解釈の変更を指示したのが5月15日だったが、自民党から異論や反論がほとんど聞かれなかったのは不思議である。
自民党の党是は自主憲法制定だが、党内にはハト派も数多く存在しており、安全保障政策に関しては、絶妙なバランス感覚を発揮してきた。ところが、今回は、ひた走る安倍首相に党を挙げてひれ伏したようだった。
閣議決定の前日、公明党の会合で「なぜこんなに拙速に決めるのか」という質問があった。この疑問に、北側一雄副代表の答えは「首相が急いでいるからだ」だった。安倍首相の「一強体制」を物語るエピソードである。
与党内に異論を唱える議員はほとんど見当たらない。首相の暴走に「歯止め」はない。これでは健全な憲政とは言えないだろう。
憲法に定められた改正の手続きを踏まない解釈改憲に基づいた閣議決定は、民主主義の理念と手続きに反しており、主権者である国民をないがしろにしている。
共同通信社による全国緊急電話世論調査によると、集団的自衛権の行使容認への反対が54・4%で半数を超え、衆院を解散して「国民に信を問う必要がある」との回答は68・4%に上った。国民が自らの意思反映を望んでいることが読み取れる。
解釈改憲という手法を認めれば、憲法の空洞化は避けられない。国民が権力の乱用を防ぐ手だてを失うことを意味し、断じて認められない。
昨夏、麻生太郎副総理は、ドイツのワイマール憲法を事実上空洞化させたナチス政権を引き合いに出して「あの手口、学んだらどうかね」と発言した。当時、麻生氏の数ある失言の一つとして受け止めたが、その通りに事が運んでいるようで不気味だ。
国民一人一人が憲法についてものを言うべき時である。
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