6月28日付 自衛権閣議決定へ 歴史の審判に耐えられぬ
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政府はきのう、集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈変更に向けて、自民、公明両党による安全保障法制の協議会に閣議決定最終案を提示した。来月1日の次回協議で正式に合意し、安倍晋三首相は同日中にも閣議決定に踏み切る見通しだ。
戦後70年近く守ってきた専守防衛の枠を超える安全保障政策の大転換であり、平和国家の看板を掲げてきた国のかたちを変えてしまう。
これまでに何度も主張してきたが、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認は、断じて認められない。
そもそも憲法は、国の最高法規であり、権力者を縛るものだ。その憲法の解釈が、時の政権の都合によって変更されることは立憲主義の否定を意味し、決してあってはならない。
今回、安倍政権による恣(し)意(い)的な解釈変更が認められれば、あしき前例となる。一度でも許せば、今後も憲法の枠を超えた政策が推し進められかねない。
問題は安全保障にとどまらない。憲法が形骸化し、取り返しがつかないことになるだろう。
民主主義は手続きが重要である。集団的自衛権の行使を容認したいのであれば、堂々と憲法改正の手続きを踏むべきだ。裏口入学のような手段は許されない。
慎重姿勢から転換した公明党の山口那津男代表は「二重、三重の歯止めが利き、拡大解釈の恐れはない」と強調している。
残念だが、歯止めが利いているとは認め難い。それは、国連の集団安全保障に基づく武力行使に関する議論を振り返れば、よく分かる。
もともと安倍首相は先月の会見で、集団安保については「これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない」と、参加を否定していた。
集団安保への参加を認めれば、海外での武力行使が際限なく広がる恐れがあるが、自民党は20日の与党協議で、公明党に検討を求めた。提起に公明党が強く反発して、議論は見送られた。
だが、来月中旬にも開く予定の国会の閉会中審査に向けて、政府が準備した想定問答集には、国連の集団安保に基づく武力行使について「憲法上許される」と明記されていることが判明した。
たった1カ月余りで、十分な議論もなく「整合しない」から「許される」に百八十度変わっている。解釈がなし崩しに広がるという懸念が、裏付けられているではないか。
共同通信の世論調査では、集団的自衛権の行使容認への反対は55・4%で半数を超えている。
全国の100を超す地方議会でも、反対や慎重な対応を求める意見書が相次いでいる。徳島県内でも那賀、牟岐両町議会で反対する意見書が可決された。牟岐町議会では、複数の自民党系議員も賛同した。
民意を問うプロセスを欠いたまま、解釈改憲にひた走る安倍政権に、国民や地方議会が不安を感じるのは当然だ。
しかし、自民党の高村正彦副総裁は「地方議会も日本人であれば慎重に勉強してほしい」と反論した。反対意見に耳を貸そうとしないその姿勢には、不安が一層募る。
詭(き)弁(べん)と強弁による憲法解釈の変更は、歴史の審判に耐えられない。
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