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自衛隊任務拡大 海外での武力行使許されない 2014年07月01日(火)

 武力紛争や迫害によってふるさとを追われ国内外に逃れた人が、2013年末時点で5千万人を超えたと、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が報告した。中東の難民・国内避難民は増え続け、紛争がもたらす悲惨な現実を端的に示している。
 シリアは泥沼の内戦から抜けられない。隣国イラクでは勢力を増したイスラム過激派と政府軍の戦闘が激化。シリアやイラン、サウジアラビアなどによる両者への「援助」も入り乱れ、中東は極めて不安定な状態に陥っている。
 これを、地球の反対側で起きている遠い出来事と捉えてはならない。今からは、日本もその紛争に巻き込まれ、混乱を助長する当事者となりかねないことを、一人一人が強く意識せねばなるまい。
 安倍晋三首相は、きょう集団的自衛権行使を容認する閣議決定に踏み切る見通しだ。
 侵略行為をした国に対して国連加盟国が決議に基づき多国籍軍を結成して制裁する集団安全保障に関しても、日本の武力行使容認へとかじを切る。他国軍への後方支援で、自衛隊の戦闘地域での活動に道を開き、国連平和維持活動(PKO)では任務遂行のための武器使用を認める。
 集団安保に関しては与党協議でも棚上げされ、ほとんど論議されていない。自衛隊派遣ありきの権力の暴走だ。国民を無視し憲法9条の理念を捨て去る歯止めなき「派兵」は、断じて許されない。
 政府は戦時における中東ペルシャ湾の他国海域での機雷除去を念頭に置く。米国は、情勢が悪化するイラクに軍事顧問団を送り込み、武器供与や偵察飛行を進めている。自衛隊が殺し殺される戦地に出向くのは絵空事ではない。
 しかし、武力に対して武力を投入しても解決にならないことは明らかだ。憎悪を増幅させ新たな火種となる。米国が大義なきイラク戦争で罪もない多くの市民を犠牲にし、いまなおテロ撲滅どころか、状況を悪化させている罪を思い出さなければならない。
 武力行使に踏み切れば民間人も巻き添えにする。
 紛争地で医療活動などをする非政府組織(NGO)は、日本が憲法9条によって武力行使しないという前提によって現地の信頼を受け、守られてきた。日本が武器を持って他国軍と行動を共にすれば、民間人も敵と見なされ、攻撃対象にされる。住民を守り平和を支援するための活動もできなくなる。
 難民たちを援助できないばかりか、紛争を拡大させ、日本人の手で新たな難民を生み出す罪さえ犯しかねない。
 必要なのは武力ではない。貧困解消や教育支援でテロ活動を封じ込める地道で毅然きぜんとした平和外交力こそ、日本は持たねばならない。