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 論説 :  集団的自衛権容認/国民的議論尽くすべき
 集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更が閣議決定された。戦後、憲法9条の下で歴代政権が積み上げてきた「憲法上許されない」との解釈を捨て、自衛隊から「専守防衛」の制約を取り払って前線に押し出そうという安全保障政策の大転換だ。

 安倍晋三首相が記者会見し、行使の限定容認に向け解釈変更の方向性を打ち出したのは5月15日のことだった。間もなく与党協議が始まり、わずか1カ月余りで決着した。協議を重ねるたびに政府、自民党が、行使容認に慎重な公明党への圧力を強め、押し切った。

 政府、自民党は繰り返し「限定容認」を強調した。公明党は、集団的自衛権とはいえ「個別的自衛権に匹敵する」くらい限定され、歯止めもかけられるから受け入れたと説明するが、「行使容認」の看板を掲げた後に拡大される懸念がぬぐえない。厳格な歯止めが掛けられるのか、さらなる議論が必要だ。

 この間、国民の理解と合意は不十分ではなかったか。玉虫色の与党合意を支えにし、従来の憲法解釈から部分的な寄せ集めで閣議決定が仕上げられた面がある。法制化の前に、いま一度、平和憲法に照らして、国民的議論を尽くすべきだ。

 1992年に本格的な海外派遣を可能にするPKO協力法が成立した。99年には朝鮮半島有事などでの米軍への後方支援を定める周辺事態法も成立し、さらに2003年成立のイラク復興支援特別措置法に基づき翌年イラクに派遣―と、自衛隊の任務は拡大してきた。

 ただ、それは「他国への攻撃に反撃する集団的自衛権は認められない」との憲法解釈の下でのことであり、戦後の一貫した立場だった。

 今回の閣議決定の核をなすのは「密接な関係にある他国に対する武力攻撃で、わが国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険があること」を柱とする「武力行使の新3要件」。これによって可能になる集団的自衛権の行使は、憲法上認められる「自衛の措置」に含まれるという組み立てになっている。

 自衛措置を憲法が許容という部分は1972年政府見解からの引用だが、この見解は「集団的自衛権は憲法上許されない」と結論づけていた。

 新3要件の効力も弱いのではないか。国の存立が脅かされる明白な危険とは、自国が攻撃され個別的自衛権を発動する事態に限りなく近いと考えられる。公明党はここにすがった面がある。だが政府、自民党の見解は違うようだ。

 もともとは与党協議で機雷掃海や米艦防護、米国に向かうミサイル迎撃など集団的自衛権絡みの8事例について行使容認の可否を議論する段取りだったが、公明党の反対で難航。答えが出ないまま、政府が発生した事態ごとに判断するということで決着させた。なおかつ、全事例で行使可能ととらえている。

 「密接な関係にある他国」も「明白な危険」も政府のさじ加減一つで決まり、自衛隊の活動が急拡大する恐れがある。さらに国連決議に基づき侵略国などに制裁を加える集団安全保障への参加や後方支援拡大の可能性もある。国民の不安に対して、政府は国民にきちんと説明してほしい。

('14/07/02 無断転載禁止)

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