ご購読はこちら
  新着情報    山陰経済ウイークリー    中央フォト    広告案内    さんさん    出版案内    政経懇話会    サイトマップ
HOME山陰のニュース全国・世界のニューススポーツコラム特集写真
| 論説 | 明窓 | 談論風発 |
催し遊ぶ買物・グルメ住まい生活健康・医療学ぶ・働く文化センターいわみ情報局山陰インド協会
 論説 :  新たな刑事司法制度/可視化の対象もっと広く
 法制審議会(法相の諮問機関)の特別部会で、新たな刑事司法制度の骨格になる「法整備の要綱」が示された。取り調べの録音・録画(可視化)や「司法取引」をめぐり一般有識者や日弁連、裁判所、検察、警察などから選ばれた委員が3年にわたり特別部会で重ねてきた議論を踏まえ、法務省がまとめた。

 最大のテーマだった取り調べの可視化で法制化にめどがついた点は評価できるが、可視化の対象は全事件の2〜3%前後に限られる。しかも実施の中心は検察。警察は日々取り扱う事件のほとんどで可視化の義務を負わないことになる。冤罪(えんざい)防止の観点からは不十分と言わざるを得ない。一方で、司法取引や通信傍受の拡大など、捜査機関が新たに手にする捜査手法には乱用の懸念もつきまとう。

 改革の最終試案となる要綱の提示で特別部会の議論は答申の取りまとめに向け大詰めを迎える。可視化の対象事件をもっと広げる必要がある。併せて警察による本格的な可視化も含め、さらなる可視化の拡大にきちんと道筋をつけてもらいたい。

 特別部会は、委員の一人で厚生労働省事務次官の村木厚子さんが逮捕・起訴され無罪となった厚労省文書偽造事件で、検察の密室での強引な取り調べや証拠改ざんが明らかになったのをきっかけに設置された。

 日弁連や一般有識者の委員らは道交法違反などを除く全事件で取り調べ全過程の録音・録画(全面可視化)を原則とするよう求めた。厚労省事件をはじめ足利事件や布川事件などの冤罪事件の教訓を踏まえれば当然だろう。これに捜査側、特に警察は「供述を得られなくなり、捜査に支障が出る」と反発。可視化の範囲で、延々と綱引きが続いた。

 一般有識者側は(1)検察は全事件で全面可視化を実施(2)警察は取りあえず裁判員裁判対象事件で全面可視化を始め、全国で録音・録画機材の準備を整えながら段階的に全事件へと広げていく―との“妥協案”も示したが、対立は解けなかった。

 今回の要綱は全面可視化を原則(暴力団事件で供述が報復を招く恐れがある場合などは例外)とし、対象を「裁判員裁判対象事件」と「検察独自捜査事件」に絞った。警察は裁判員事件だけで可視化をすればよく、原則全面可視化や将来の見直し検討を盛り込むことによって有識者側の顔も立てたということだろう。

 しかし本来あるべき可視化にはほど遠い。さらに司法取引も考え合わせると、対象事件を広げることが必要だ。導入が見込まれる司法取引の一つ「協議・合意制度」では、容疑者や被告が共犯者ら他人の犯罪を解明するため供述したり証拠を提出したりすれば、検察官は起訴見送りや取り消しの合意ができる。

 捜査には強力な「武器」になる。有識者・日弁連側も「供述への過度の依存から脱却できるなら」と受け入れた。だが、容疑者らが罪を免れるために無関係の人を巻き込む危険を伴う。初期の供述と協議・合意後の供述を比較しながら、虚偽の内容がないか検証しなければならない。

 そのような事件が裁判員事件や検察独自事件とは限らず、この点からも、可視化の役割はますます重要になってくる。

('14/07/01 無断転載禁止)

関連記事

powered by weblio


ロード中 関連記事を取得中...

購読のご案内
HOME | 山陰ニュース | 全国・世界ニュース | スポーツ | コラム | 特集 | 写真 | 催し | 遊ぶ | 買物 | 生活 | 健康・医療 | 学ぶ・働く | △上に戻る
本サイト内の記事・写真・イラスト等の無断掲載・転用を禁じます。すべての著作権は山陰中央新報社に帰属します。
Copyright(C)2000 The San-in Chuo Shimpo All Rights Reserved.
  
47NEWS 参加社一覧
北海道新聞  | 室蘭民報  | 河北新報  | 東奥日報  | デーリー東北  | 秋田魁新報  | 山形新聞  | 岩手日報  | 福島民報  | 福島民友新聞  | 産業経済新聞  | 日本経済新聞  | ジャパンタイムズ  | 下野新聞  | 茨城新聞  | 上毛新聞  | 千葉日報  | 神奈川新聞  | 埼玉新聞  | 山梨日日新聞  | 信濃毎日新聞  | 新潟日報  | 中日新聞  | 中部経済新聞  | 伊勢新聞  | 静岡新聞  | 岐阜新聞  | 北日本新聞  | 北國新聞  | 福井新聞  | 京都新聞  | 神戸新聞  | 奈良新聞  | 紀伊民報  | 山陽新聞  | 中国新聞  | 日本海新聞  | 山口新聞  | 山陰中央新報  | 四国新聞  | 愛媛新聞  | 徳島新聞  | 高知新聞  | 西日本新聞  | 大分合同新聞  | 宮崎日日新聞  | 長崎新聞  | 佐賀新聞  | 熊本日日新聞  | 南日本新聞  | 沖縄タイムス  | 琉球新報  | 共同通信