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 歴史の評価に耐えうる政治判断とはとても言えない。わずか13時間の「密室協議」で集団的自衛権の行使容認が閣議決定された。

 安倍晋三首相は「平和国家の歩みをさらに力強いものにする」と胸を張った。だが、海外での武力行使への道を開く判断は、戦後日本のかたちを変える、危うい選択である。

 最大の問題は「集団的自衛権」を明記したことだ。「限定容認」を掲げても曖昧な要件では歯止めにはならない。第2次世界大戦後、戦争の大半は集団的自衛権行使の名の下に行われたことを想起すべきである。

 湾岸戦争の時、当時のブッシュ米大統領は海部政権に多国籍軍への自衛隊派遣を求めてきた。この時、自民党の重鎮、後藤田正晴氏は「アリの一穴になる」と強く反対したとされる。一つの穴から平和主義が崩れてしまいかねない。結局、日本は憲法9条を理由に派遣を断った。

 集団的自衛権の行使容認は、この「一穴」といえる。「国民の権利が根底から覆される明白な危険」「わが国の存立が脅かされる」などと要件を連ねても、安倍首相が「穴」を開けたことには変わりない。

 集団的自衛権の行使容認の報告書をまとめた首相の私的懇談会メンバーは、第1次安倍政権時の懇談会とほぼ同じだ。2008年6月に出された行使容認の報告書は、その後の自公政権時代も含めて6年間もたなざらし状態になった。

 国民の理解が深まらず、政治的な優先度も高くはなかったからだろう。それをなぜ、国民不在で拙速に決めたのか。1カ月半の与党協議で安全保障政策を大転換した。

 病気の影響もあって一度は退陣を余儀なくされた安倍首相は、第1次政権時代に成就できなかった政策を実現させようと覚悟を持って臨んでいるのだろう。だが、日本が戦後70年近く覚悟を持って「非戦」を貫いてきたことは念頭にないのか。

 特定秘密保護法を数の力で成立させたのに続き、今回は解釈変更の閣議決定で平和憲法の縛りを解いた。あまりに乱暴な政治手法だ。

 首相には信念があるのかもしれないが、国民を置き去りにして突っ走る姿勢は独善でしかない。

 一度開いた「穴」をどうふさいでいくか。国会論戦では野党の役割が問われる。何より政治の暴走を許さないという国民の覚悟が要る。

  
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