安倍政権が1日にも閣議決定しようとしている集団的自衛権の行使容認をめぐり、全国の地方議会から「待った」の声が相次いでいる。
安倍晋三首相が目指す憲法解釈変更による行使容認に反対したり、慎重な検討を求めたりする意見書を可決した県、市町村の議会は100を超え、増え続けている。
国の安全保障政策に関して、地方議会からこれほどの意見書が出されるのは異例だ。平和憲法を揺るがす重大な転換であり、国民の間に不安が広がっている証しといえる。
政府、与党は地方の声に耳を傾け、拙速な閣議決定を見送るべきだ。
兵庫県内では、加古川市議会が5月に「行使容認について慎重審議を求める意見書」を賛成多数で可決した。6月には香美町議会が「憲法解釈変更に反対する意見書」を可否同数の末、議長裁決で可決した。
意見書は、暮らしに根差した切実な思いを反映している。
那覇市議会は6月20日、沖縄戦の「慰霊の日」を前に意見書を可決した。「米軍基地と隣り合わせの生活から、多くの沖縄県民が他国の戦争に巻き込まれる不安を抱いている」という抗議の表明である。
東日本大震災と原発事故の被災地、福島県南相馬市議会は全会一致で反対を議決し「震災で助けてくれた自衛隊員が海外に出て武力行使するのは容認できない」と訴えた。
自民、公明両党の所属議員が、政府に慎重な対応を求める意見書に名を連ねた地方議会も少なくない。
公明党は当初、憲法解釈変更による行使容認に慎重だった。執行部は容認への方針転換について28日に地方組織の幹部を集めて説明したが、「平和の党是に反する」などの厳しい反応がほとんどだったという。
開かれた議論を避け、国民の疑問や迷いを無視して決着を急ぐ。意見書は、安倍政権の強引さへの異議申し立てと受け止めるべきだ。
ところが、自民党の高村正彦副総裁は「地方議会も日本人であれば慎重に勉強してほしい」と反論した。地方を軽視し、異論を封じるかのような発言である。安倍首相も会見で、異論はあっても「決めるべきときは決める」と述べている。
地方の懸念を無視して閣議決定に突き進むのなら、国民不在の強権政治だ。地方から抗議の声を上げ続けねばならない。
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