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 集団的自衛権の行使容認に向けた自民、公明両党の与党協議がヤマを越えた。安倍政権は両党の了承を得て、来週早々にも従来の憲法解釈を見直す閣議決定に踏み切る構えだ。

 国会では与党が過半数を占め、提出される関連法案を阻む壁はない。秒読みの閣議決定が歴史的な国の転機を画することになるだろう。

 戦後日本は「専守防衛」の立場を厳しく守ってきた。自衛隊が他国で武力を行使することはしない。殺すことも、殺されることもない。

 憲法9条がうたう平和主義を国民は支持し、誇りにしてきた。

 閣議決定に盛り込む集団的自衛権の行使容認は、日本が攻撃を受けていなくても、他国が攻撃されたときの武力行使に道を開く。専守防衛の枠を超え、戦後70年近く掲げてきた平和国家の根幹を大転換する。

 しかも、憲法の形骸化につながる見直しを国民に問うことなく、一内閣の判断で行おうというのだ。

 この重大な決定が、それにふさわしい熟議から導かれたのか。

 論点はころころ変わり、「密室」協議で詳しい内容も分からない。集団安全保障に基づく武力行使が唐突に示されたり、引っ込められたり。エネルギーはもっぱら公明党の同意を得るための駆け引き、文言修正に注がれたことは明らかだった。

 まして、憲法解釈変更に対する批判を受け止め、手法の是非を顧みる姿勢は毛頭、見られなかった。

 「平和主義」の旗印が日本に対する信頼感や期待のベースにあった。身の安全にもつながった。それが崩れてしまう‐海外で紛争後の復興支援などに汗を流す日本人から、よくそんな声を聞く。

 現場からのリアルな懸念であり、多くの国民も共有する。だが、こうした予想されるマイナス面が積極的に検討された形跡はない。

 首相は「平和主義は守り抜く」とくり返すが、やろうとしていることと矛盾しないか。安全保障環境が変わる東アジアでどんな外交戦略を持ち、集団的自衛権の行使を含む新たな安保政策をどう位置づけるか。

 協議は深まらないまま、国の針路が大きく変わろうとしている。

 「決めるべきときは、決めなければならない」と首相は言うが、手順と実のある議論があってこそ。それらを伴わない決定は、将来に禍根を残す。許されるものではない。

  
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