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テレビのやらせ批判は間違い?その実態と生まれるカラクリ 情報番組で横行するステマ

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--そうしたやらせ的な行為は、バラエティ番組だけではなく、ニュース報道でも行われていると本書には書かれています。具体的には、どのようなことが行われているのでしょうか?

長谷川 これも同じく第3章に記してありますが、09年に世界的に新型インフルエンザが大流行すると報じられ、日本中が大騒動になった時のことです。私は当時、朝の情報番組『とくダネ!』を担当していましたが、かなり危険だという情報が巡っていて、それを他社に先駆けて報じようとスタッフは徹夜で準備していたら、放送開始1時間くらい前に、なんとWHO(世界保健機関)の「ウイルスの毒性は強くない」という発表が入ってきたんです。

 その時点で画面の中央にドーンと「パンデミック(世界的感染拡大状態)」というテロップなどが入った、危機を煽りに煽るマルチ画面をつくってしまっており、もう直しようがなかった。しかも番組内ではトップニュースとして25分も枠が取られていて、「世界的大感染・パンデミック」とテレビ欄にも打っている。そこに「実は風邪より弱い」という情報が入ってきたわけですが、私とディレクターの判断で、放送ではその情報を封殺し、私は「『パンデミック』と、そう呼ぶのであります!」とプレゼンをしました。この放送後、日本中が大騒動になったのは皆さんもご記憶の通りです。

--一般視聴者からすると、テレビのニュース報道は中立だという感覚があるのですが、それは違うということでしょうか?

長谷川 そこを考え直してほしいのです。ニュース番組や情報番組を見ていただいたらわかる通り、CMが入っている。その段階で、放送内容が公平なわけがない。それは「売り物」だからです。NHKの番組は国民のお金でつくられていますが、民放各局はテレビ番組という「商品」を売っているだけなので、そこに公平とか公正を求めるほうがおかしいのです。

 そこを一歩引いた目線で見れば、テレビはもっと楽しめるのです。本書にはテレビの制作現場の一見するとひどいとも思える実態がたくさん書かれていますが、実は壮大な「テレビ賛歌」を書いたつもりです。「テレビって一歩引いて見たら面白い」「プロレスって面白いでしょ?」という。「でも、あれはマジでやったら、人が死ぬんですよ」と。だから、テレビででも演出をかけている。それを読み解く力を持とうというのが、本書の要諦です。

●やらせ批判はナンセンス?

--『ほこ×たて』では、ラジコンカーと猿の首を釣り糸でつなぐという、かなり悪質なやらせが発覚しましたが、長谷川さんは、「番組プロデューサーが悪い」と責めるのは間違いだとおっしゃっていますが、それはなぜでしょうか?

長谷川 『ほこ×たて』は全体論でいうと、ひとつも悪くない。あくまでテレビ的な演出であり、少しでも視聴者の方々に喜んでいただきたい、少しでも楽しくテレビを見て親子で盛り上がっていただきたい、という思いから懸命につくられていました。そもそも、エンターテインメントである「バラエティ番組」に対して「やらせはけしからん」と批判すること自体がナンセンス極まりないです。そんなことを言い始めたら、バラエティ番組はすべてやらせです。

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