集団的自衛権:武力行使拡大、鮮明に 首相「政府が判断」

毎日新聞 2014年07月14日 21時46分(最終更新 07月14日 23時26分)

外交・安全保障政策についての衆院予算委の集中審議で質問を聞く安倍首相=国会内で2014年7月14日午後1時27分、山本晋撮影
外交・安全保障政策についての衆院予算委の集中審議で質問を聞く安倍首相=国会内で2014年7月14日午後1時27分、山本晋撮影

 安倍晋三首相は集団的自衛権の行使容認を巡る14日の衆院予算委員会で、1日の閣議決定の「武力行使の新3要件」に基づく戦時の機雷掃海について、「(中東・ホルムズ海峡の)機雷による封鎖は日本経済に打撃を与え、多くの中小企業が被害を受ける。3要件で判断する」と述べ、経済への影響を理由にした武力行使は可能だとの認識を示した。さらに機雷掃海中、国連決議に基づく集団安全保障による武力行使が始まっても「日本が武力行使をやめることはない」と明言。武力行使が拡大する可能性が浮き彫りになった。

 首相は、攻撃を受けた他国の防衛のために日本が武力行使する条件について、「攻撃国の言動などから、攻撃を早急に止めなければ我が国にも武力攻撃が行われかねない状況が、想定される一例だ」と説明。ただし「政府が情報を総合して個別・具体的に判断する必要がある」と述べ、▽攻撃国の意思、能力▽日本に戦禍が及ぶ蓋然(がいぜん)性▽国民の犠牲の深刻さ、重大性−−などから判断する、とあいまいさを残した。

 防衛対象となる他国について、岸田文雄外相は「米軍に対する武力攻撃はそれ以外の国への武力攻撃と比較しても、新3要件に当てはまる可能性は高い」と述べ、日米同盟に深刻な影響が出ると判断すれば、日本が武力行使する可能性が高いと説明した。また首相は「米国以外の可能性は相当限定される」としながらも、政府が個別に判断すると述べた。

 一方、政府が新3要件を恣意(しい)的に判断しかねないという懸念に対し、横畠裕介内閣法制局長官は「日本が武力攻撃を受けたのと同様に、深刻・重大な被害が及ぶことが明らかな状況」や「単なる主観や推測ではなく、客観的・合理的に疑いなく認められる」ことが必要と指摘。政府が抑制的に対応すると強調し、首相も「私の答弁と基本的に変わりない」と同調した。

 ただ、首相や岸田氏は、日米同盟への悪影響や日本経済への打撃を「日本への武力攻撃と同様の被害」と判断する可能性を提示。政府の新3要件の解釈次第では、武力行使の範囲が拡大する可能性がある。

 また集団安保での武力行使解禁について、首相は「日本が個別的自衛権を行使している時に、国連決議があって集団安保に変わった場合、(日本の)武力行使は当然続いていく。それは新3要件についても当てはまる」と明言。戦時の機雷掃海を念頭に、海外での武力行使の可能性を認めた。

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