懸賞金を見せつけるように掲げながら引き揚げる白鵬=愛知県体育館
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◇名古屋場所<初日>
史上3人目となる30度目の優勝を狙う横綱白鵬(29)=宮城野=が小結安美錦を押し出しで下した。これで幕内746勝となり、大鵬と並ぶ史上4位タイだ。横綱2場所目の鶴竜は勢をはたき込みで退け、4場所ぶりの賜杯を目指す横綱日馬富士は小結碧山を押し出した。大関稀勢の里(28)=田子ノ浦=は松鳳山を押し出し、かど番の大関琴奨菊は豊真将をはたき込んだ。横綱、大関陣がそろって白星スタートを切るのは2場所ぶり。注目される遠藤(23)=追手風=は黒星スタートとなった。
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安美錦が引いたところを、白鵬は一気に前へ。土俵下までもつれて落ちたが、内容的にはまったく危なげない。
取組後は「まあ、前に出る圧力というかな。土俵勘、相撲勘というのかな。そういったものが出た一番。最後は力を抜いて(相手を)出し切った」と、初日にして手応えを口にした。
大台の優勝30回を狙う場所。番付発表から初日前日まで取材に応じたのはわずか3日。「早々と決めたい」と優勝への思いをストレートに口にするが、その一方で別の思いもある。
「優勝したい、1位になりたいという思いを抑えないといけない。そうじゃないと、いいものが出ない。だんだん悪くなっていくだけ」
母国の英雄であるチンギスハンの話を例に出したのは、妊娠5カ月で子どもを失った悲しみを乗り越えて29回目の優勝を飾った夏場所後だった。
「チンギスハンが言っていた。王になりたいという人間を王にさせてはいけない、と。そうなれば国が滅びる」。白鵬は自身の心と闘っている。
だからだろうか。この日の白星は尊敬する元横綱大鵬と並び、史上4位タイとなる幕内通算746勝目。「うれしいですね」と発した後は「そういう細かい記録は、一般的には紹介されていないから。並んだって言われてもね。まだまだですし」と表情を変えることはなかった。
名古屋場所には特別な思いがあるという。忘れられないのが、2010年の名古屋場所。「名古屋場所は暑さとの闘いになるけど、思い出はたくさんある。(野球賭博問題で)天皇賜杯がなかった場所。悲しい出来事だった。その1カ月後に天皇陛下からねぎらいの手紙をいただいた。汗と涙と喜び。いろんなものを与えてくれたような感じがします」。今年の名古屋場所は白鵬に何を与えてくれるのだろうか。
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