声優アイコ昏睡強盗:身寄せ「家の方がゆっくりできるよ」
毎日新聞 2014年07月14日 15時40分(最終更新 07月14日 15時53分)
2012年6月以降、東京都内で十数件相次いでいた「声優のアイコ」を名乗る女による昏睡(こんすい)強盗事件。警視庁捜査1課は今月7日、一連の事件のうち、今年2月に杉並区の男性会社員(23)から現金などを奪った容疑で、同区の無職、神(じん)いっき容疑者(30)を逮捕した。神容疑者とみられる女の被害に遭った都内の30代男性が毎日新聞の取材に応じ、巧みな手口を語った。
クリスマスでにぎわっていた昨年12月25日未明。会社の忘年会帰りに、男性がJR渋谷駅近くのそば屋で1人で酒を飲んでいると、突然、若い女が「乾杯しましょう!」と声を掛けてきた。
ヒョウ柄のベレー帽にピンクの手袋。男性が「芸能関係の仕事をしている」と自己紹介すると、女は「声優をしている」と話し、すぐに意気投合した。「少しブリッ子な話し方や髪の毛をなでる仕草がかわいかった」
2人で店を出て行きつけのバーに向かう途中、女は男性の腕を取り、体を寄せた。「家の方がゆっくりできるよ」。その言葉を合図に男性宅に流れ、さらにワインやウイスキーを飲んだ。
その後、女は男性宅に向かう途中のコンビニエンスストアで買った二日酔い防止のドリンク剤を差し出し、「飲み過ぎたね。一気に飲んでね」とささやいた。言われるまま飲み干した男性にその後の記憶はなく、気付いたら午前9時を過ぎていた。部屋の引き出しが開けっ放しにされるなど現金約36万円がなくなっていた。睡眠薬とみられる影響のせいで意識がもうろうとしながら、必死に110番した。
今年4月、警視庁はヒョウ柄のベレー帽とミニスカート姿で「声優のアイコ」と名乗る女の画像を公開した。「この女だ」。テレビで見た男性はピンときたというが、神容疑者が逮捕された際には、被害を受けた時の悔しさがよみがえったという。
男性は被害当時、交際していた女性と別れたばかりで寂しさがあったというが、用心深いタイプの自分がだまされる立場になるとは思ってもみなかったという。男性は「睡眠薬の量が多ければ死んでいたかもしれない。男性心理につけ込んだ犯行で許せない」と怒りをあらわにし、被害金の返還を求めて訴訟を起こすことも検討しているとした。【山崎征克】