つれづれエッセイ日記ですv
あをまる日記
PBCなりきりチャット(中中編)
(この記事は本来「後編」になる筈だったけど一回に収まらなかったので変なタイトルになってます;済みません;)
それからまた1〜2年経った頃、たまたまごく気楽に参加出来そうなサイトを見つけた。
未成年プレイヤーばかりだった今までのサイトよりも年齢層はやや高いのか、皆文章が整って見える。
無料プロフィール作成サイトの使用が普及し、キャラクター達の容姿や職業といった細部の設定も作り込まれている分、以前よりずっと面白そうにも思えた。
とりあえず自分も同じようにキャラクターの絵を描き、プロフィールページを立ち上げて久しぶりに参加してみる事にした。(プロフは名刺、キャラ画像は写真と呼ばれる)
それまで使用していたのが「内気な青年」だったが故に、あらゆる場面で必要以上に流されてしまった事から今回は「アクティブな不良」に設定。
やがて他キャラとくっついたり離れたりと色々ありつつ以前よりはかなり楽しく遊べたが、誰かを「恋人」にした場合、やはり毎日何通もメールしたり他の人との接触が制限されたりと実生活にも制約が多くなるんだろうな、という気遅れは常にあり、そうならぬよう一応注意深く行動していた。
やはり私にとってPBCは気晴らしや暇潰しであり、現実との境目が見えなくなる程のめり込んだり、まして現実の恋愛感情に準ずるものではあり得なかった。
その頃、遊ぶのと同時に情報収集やマナー習得の為に2chの専門スレも頻繁に覗いていたが、そこでこんなやり取りを見つけた。
「私のダーリンがクローズ(鍵がかかる為、他人からログが見えないチャットルーム)で誰かと会ってる。辛い、苦しい」
「落ち着け、冷静に考えろ。ソイツはお前のダーリンなんかじゃない!日本の何処かで携帯打ってるお前と同じただの腐女子だ!」
……その通りだと思った。
クローズルームに二人で入室したところで、彼等(彼女等?)の間で何が起きている訳でもない、文章のやりとりが行われているに過ぎないのだから。
しかし、そのサイトに出入りするようになって2〜3カ月した頃の事。
オープンルーム(入室しなくてもログが読めるチャットルーム)に一人のキャラクターが待機しているのを見つけ、初めて見る名前だなと、リンクされているプロフィールページを見たその瞬間、不思議な衝撃を感じ強く惹き付けられた。
貼られている画像は流行のフォトショ絵とは違うややリアルタッチの個性的な絵柄で、ロールも台詞回しも少しアクが強く独特な文体。
容姿も性格設定も口調も好みで、漫画や小説やアニメに登場していればすぐ贔屓にするであろうタイプのキャラクターだった。
オープンルームに一人で待機しているのだから、その人は今夜の話し相手を探しているという事だ。
興味が湧いたなら自分も入室して話しかけてみれば良いだけの話なのだが、何かポカをやって嫌われたらどうしよう、などとせんのない思考が渦巻き何故か動けない。
画面に映る「彼」の動向から目が離せないまま入室を躊躇しているうちに別の人が入室したので、そのまま二人の会話を目で追った。
「彼」はプロフィールの性格説明に「プライドが高い」とある通りのようで、入ってきた相手に満足出来ないとなるや、辛辣な皮肉をさらりと浴びせて華麗に退場し、取り残された相手はショックを受けて暫くポカンと固まった後、無言で部屋から消えて行った。
正直見ているだけヒヤリとした。マナーという面でも実際褒められた態度じゃない。しかし何故か終始全く目が離せなかった。
そして今夜この辛辣な拒絶を受けたのが自分でなくて良かったと、心底安堵した。
目が離せない、と感じたのはこの時の相手も同じだったのか、「彼」にあれだけにべもなく振られたにも関わらず、掲示板でもう一度会いたいと呼びかけたり「彼」を見つければ追い回したりと暫くの間熱心だったが、後日再度恋人にする気は無い(寧ろお前にその資格は無い、というニュアンス)旨を掲示板で告げられて漸く諦めた様子だった。
「彼」がどうやら手ごわい性格らしいのが分かれば分かる程気遅れし、それから数度見かけたは良いものの、入室ボタンを押せないまま観察するだけの日が続いた。
……掲示板での他人同士のやりとりにまで注目していた事で分かると思うが、当時の私は既に半ばストーカー化していたと思う;
頻繁にプロフィールページを覗き、掲示板でのやりとりを覗き、チャットルームに現れればつい、一挙一動に見入ってしまっていた。
やがて「彼」の手ごわさにめげずにアタックし続ける人も他に現れ、一途に追い回す姿そのを見かけるにつれてこちらも焦りが湧いてきた。
このまま「彼」が特定の恋人を作れば、一度も話せないまま姿を消してしまうかもしれない(特定の相手が決まればツールを携帯メールに限定して地下に潜る人も多い)
そうなる前にせめて一回は話してみたい、と思っていたある深夜の事。
もう二時にもなった頃「彼」が一人でいるのを見つけた。
この時間帯になればもう今から入る人はあまりいないだろう。という事は話が出来る絶好の機会でもある。散々逡巡した後、思い切って入室した。
緊張の余り何度もタイプミスを繰り返したが「彼」は退屈して途中で立ち去るという事も無く(これを一番恐れていた)冷や汗をかきながらも会話は弾み、やり取りは明け方まで続いた。
ようやく接した「彼」は外から眺めていた時以上に魅力的に感じ、その時の高揚感、充実感は数日経っても消えない程だった。
しかしそれから幾らもしないうちに「彼」は姿を見せなくなった。
珍しい事ではない、プレイヤーが忙しくなったり飽きたりで会う人が入れ替わるのはよくある事だ。
一度話せた事で満足もしていたし、そもそも何度も同じ相手を追い回す度胸は無かったし、寧ろ一度楽しい思い出の持てた自分の中では、それが丁度良い区切りになったようにも思えていた。
しかし、それからまた三カ月程経った夜。
ずっと見かける事の無かったあの名前があるのを見つけ、思わず息を呑んだ。
別に驚く事でも何でもない。プレイヤーさんに暇が出来て久しぶりに遊びに来たのだろう。
「彼」が復活したという事。それはつまり、また他の人と話したり火遊びに興じたり恋仲になったり(BLサイトなので)という行動を目の当たりにするという事でもある。
それを思うと何故か平静で居られず、どうしよう大変だ!と、半分パニックになった;
……どうやら私の分身(使用キャラクター)は、いつの間にか恋に落ちていたらしかった。
そこにPBCという遊びの不思議さがあった。
夢中になった相手が漫画やアニメのキャラクターならば、そのキャラクターは印刷された紙に、ブラウン管の向こうに描かれた「表現」の中に居る。
演ずる声優さんやらが居ても「その人」自体は架空の存在であり、それを愛するのは二次創作にせよコスチュームプレイにせよあくまでも「一方通行」の形を取る。
PBCのキャラクターも同じくプレイヤーの創作物であり架空の存在ではあるが、「その人」が存在するのはチャットやメールというコミュニケーションツール上での「文章」の中。アニメや漫画とはまた違う場所に居て、「彼」は話しかければ答えるし、誤解や擦れ違いで喧嘩になる事もあれば、キャラクター同士で恋仲になる事もある。
刻一刻と形を変える生身の人間関係の起きうる存在だ。
同人界では俳優やアイドルを対象にした活動を「ナマモノジャンル」と呼んで二次元ファンジンと区分けしているが、生身の俳優が演じている「キャラクター」が対象の時は「半ナマ」と呼び表すらしい。
一方通行ではない。けれど生身の人間関係でもないPBCのキャラクターも、また違った意味で「半ナマ」と呼べるように思う。
印刷されて売られている有名なキャラクターではない。けれど生身で存在している人間でもない。ならどこに存在しているのか。
心を強く動かし揺らした「彼」はプロフィールページに置かれたたった一枚の絵と、誰とも知らぬプレイヤーが打った、時間が経てばどんどん流れて行くログ、文字の連なりの中にしか存在しない。
その頃からその人のログや掲示板でのメッセージ、プロフィールページの日記、新しい文章を見つける度に、そのごく数少ない「彼の欠片」を集めては保存した。「彼」はその欠片の中にしか存在しない、この欠片が彼なのだと思ったからだ。
…もしかしなくてもストーカーである;
そして再び話しかける機会を伺い迷っている間にパソコンが不調になり、修理が終わらぬうちに「彼」は再び姿を見せなくなった。
元々出没が不定期な人だったので予測してはいたが、どうやら惚れたらしいと自覚した以上、今度はホッと安堵という訳にも行かず、クヨクヨ鬱々と再会の機会を待つ事になった。
(次で終わります;)
それからまた1〜2年経った頃、たまたまごく気楽に参加出来そうなサイトを見つけた。
未成年プレイヤーばかりだった今までのサイトよりも年齢層はやや高いのか、皆文章が整って見える。
無料プロフィール作成サイトの使用が普及し、キャラクター達の容姿や職業といった細部の設定も作り込まれている分、以前よりずっと面白そうにも思えた。
とりあえず自分も同じようにキャラクターの絵を描き、プロフィールページを立ち上げて久しぶりに参加してみる事にした。(プロフは名刺、キャラ画像は写真と呼ばれる)
それまで使用していたのが「内気な青年」だったが故に、あらゆる場面で必要以上に流されてしまった事から今回は「アクティブな不良」に設定。
やがて他キャラとくっついたり離れたりと色々ありつつ以前よりはかなり楽しく遊べたが、誰かを「恋人」にした場合、やはり毎日何通もメールしたり他の人との接触が制限されたりと実生活にも制約が多くなるんだろうな、という気遅れは常にあり、そうならぬよう一応注意深く行動していた。
やはり私にとってPBCは気晴らしや暇潰しであり、現実との境目が見えなくなる程のめり込んだり、まして現実の恋愛感情に準ずるものではあり得なかった。
その頃、遊ぶのと同時に情報収集やマナー習得の為に2chの専門スレも頻繁に覗いていたが、そこでこんなやり取りを見つけた。
「私のダーリンがクローズ(鍵がかかる為、他人からログが見えないチャットルーム)で誰かと会ってる。辛い、苦しい」
「落ち着け、冷静に考えろ。ソイツはお前のダーリンなんかじゃない!日本の何処かで携帯打ってるお前と同じただの腐女子だ!」
……その通りだと思った。
クローズルームに二人で入室したところで、彼等(彼女等?)の間で何が起きている訳でもない、文章のやりとりが行われているに過ぎないのだから。
しかし、そのサイトに出入りするようになって2〜3カ月した頃の事。
オープンルーム(入室しなくてもログが読めるチャットルーム)に一人のキャラクターが待機しているのを見つけ、初めて見る名前だなと、リンクされているプロフィールページを見たその瞬間、不思議な衝撃を感じ強く惹き付けられた。
貼られている画像は流行のフォトショ絵とは違うややリアルタッチの個性的な絵柄で、ロールも台詞回しも少しアクが強く独特な文体。
容姿も性格設定も口調も好みで、漫画や小説やアニメに登場していればすぐ贔屓にするであろうタイプのキャラクターだった。
オープンルームに一人で待機しているのだから、その人は今夜の話し相手を探しているという事だ。
興味が湧いたなら自分も入室して話しかけてみれば良いだけの話なのだが、何かポカをやって嫌われたらどうしよう、などとせんのない思考が渦巻き何故か動けない。
画面に映る「彼」の動向から目が離せないまま入室を躊躇しているうちに別の人が入室したので、そのまま二人の会話を目で追った。
「彼」はプロフィールの性格説明に「プライドが高い」とある通りのようで、入ってきた相手に満足出来ないとなるや、辛辣な皮肉をさらりと浴びせて華麗に退場し、取り残された相手はショックを受けて暫くポカンと固まった後、無言で部屋から消えて行った。
正直見ているだけヒヤリとした。マナーという面でも実際褒められた態度じゃない。しかし何故か終始全く目が離せなかった。
そして今夜この辛辣な拒絶を受けたのが自分でなくて良かったと、心底安堵した。
目が離せない、と感じたのはこの時の相手も同じだったのか、「彼」にあれだけにべもなく振られたにも関わらず、掲示板でもう一度会いたいと呼びかけたり「彼」を見つければ追い回したりと暫くの間熱心だったが、後日再度恋人にする気は無い(寧ろお前にその資格は無い、というニュアンス)旨を掲示板で告げられて漸く諦めた様子だった。
「彼」がどうやら手ごわい性格らしいのが分かれば分かる程気遅れし、それから数度見かけたは良いものの、入室ボタンを押せないまま観察するだけの日が続いた。
……掲示板での他人同士のやりとりにまで注目していた事で分かると思うが、当時の私は既に半ばストーカー化していたと思う;
頻繁にプロフィールページを覗き、掲示板でのやりとりを覗き、チャットルームに現れればつい、一挙一動に見入ってしまっていた。
やがて「彼」の手ごわさにめげずにアタックし続ける人も他に現れ、一途に追い回す姿そのを見かけるにつれてこちらも焦りが湧いてきた。
このまま「彼」が特定の恋人を作れば、一度も話せないまま姿を消してしまうかもしれない(特定の相手が決まればツールを携帯メールに限定して地下に潜る人も多い)
そうなる前にせめて一回は話してみたい、と思っていたある深夜の事。
もう二時にもなった頃「彼」が一人でいるのを見つけた。
この時間帯になればもう今から入る人はあまりいないだろう。という事は話が出来る絶好の機会でもある。散々逡巡した後、思い切って入室した。
緊張の余り何度もタイプミスを繰り返したが「彼」は退屈して途中で立ち去るという事も無く(これを一番恐れていた)冷や汗をかきながらも会話は弾み、やり取りは明け方まで続いた。
ようやく接した「彼」は外から眺めていた時以上に魅力的に感じ、その時の高揚感、充実感は数日経っても消えない程だった。
しかしそれから幾らもしないうちに「彼」は姿を見せなくなった。
珍しい事ではない、プレイヤーが忙しくなったり飽きたりで会う人が入れ替わるのはよくある事だ。
一度話せた事で満足もしていたし、そもそも何度も同じ相手を追い回す度胸は無かったし、寧ろ一度楽しい思い出の持てた自分の中では、それが丁度良い区切りになったようにも思えていた。
しかし、それからまた三カ月程経った夜。
ずっと見かける事の無かったあの名前があるのを見つけ、思わず息を呑んだ。
別に驚く事でも何でもない。プレイヤーさんに暇が出来て久しぶりに遊びに来たのだろう。
「彼」が復活したという事。それはつまり、また他の人と話したり火遊びに興じたり恋仲になったり(BLサイトなので)という行動を目の当たりにするという事でもある。
それを思うと何故か平静で居られず、どうしよう大変だ!と、半分パニックになった;
……どうやら私の分身(使用キャラクター)は、いつの間にか恋に落ちていたらしかった。
そこにPBCという遊びの不思議さがあった。
夢中になった相手が漫画やアニメのキャラクターならば、そのキャラクターは印刷された紙に、ブラウン管の向こうに描かれた「表現」の中に居る。
演ずる声優さんやらが居ても「その人」自体は架空の存在であり、それを愛するのは二次創作にせよコスチュームプレイにせよあくまでも「一方通行」の形を取る。
PBCのキャラクターも同じくプレイヤーの創作物であり架空の存在ではあるが、「その人」が存在するのはチャットやメールというコミュニケーションツール上での「文章」の中。アニメや漫画とはまた違う場所に居て、「彼」は話しかければ答えるし、誤解や擦れ違いで喧嘩になる事もあれば、キャラクター同士で恋仲になる事もある。
刻一刻と形を変える生身の人間関係の起きうる存在だ。
同人界では俳優やアイドルを対象にした活動を「ナマモノジャンル」と呼んで二次元ファンジンと区分けしているが、生身の俳優が演じている「キャラクター」が対象の時は「半ナマ」と呼び表すらしい。
一方通行ではない。けれど生身の人間関係でもないPBCのキャラクターも、また違った意味で「半ナマ」と呼べるように思う。
印刷されて売られている有名なキャラクターではない。けれど生身で存在している人間でもない。ならどこに存在しているのか。
心を強く動かし揺らした「彼」はプロフィールページに置かれたたった一枚の絵と、誰とも知らぬプレイヤーが打った、時間が経てばどんどん流れて行くログ、文字の連なりの中にしか存在しない。
その頃からその人のログや掲示板でのメッセージ、プロフィールページの日記、新しい文章を見つける度に、そのごく数少ない「彼の欠片」を集めては保存した。「彼」はその欠片の中にしか存在しない、この欠片が彼なのだと思ったからだ。
…もしかしなくてもストーカーである;
そして再び話しかける機会を伺い迷っている間にパソコンが不調になり、修理が終わらぬうちに「彼」は再び姿を見せなくなった。
元々出没が不定期な人だったので予測してはいたが、どうやら惚れたらしいと自覚した以上、今度はホッと安堵という訳にも行かず、クヨクヨ鬱々と再会の機会を待つ事になった。
(次で終わります;)
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