ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」
【第11回】 2014年7月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
鈴木寛 [東京大学・慶応義塾大学教授、元文部科学副大臣]

「自分たちのサッカー」の言葉に見る日本の宿痾
ザッケローニ氏に総括を聞きジュニア育成に活かせ

previous page
2
nextpage

 では、予選グループリーグ終了までに工事が終わるのかと思いきや、日程を確認すると、ナタールでは決勝トーナメントの試合が行われません。現地の人に聞いても、苦笑いするばかりで半分お手上げといった感じです。

 道路の整備ですら、そういう状況なのでスタジアム近隣にも店があまり開業できていません。ようやくスタジアムの中で、FIFAの公認グッズを売っている店舗を見つけ、私もお土産を買おうと中に入ってみると、今度は観戦に来たお客さんたちがレジの前で長蛇の列を成したままの状態です。

 混雑の原因を探ると、日本のスーパーやコンビニのように繁忙時に空いているレジに店員がさっと入って、お客さんをテキパキとさばくような対応が取れていない。それどころかバーコードのスキャニングやレジを打つスキルも習熟していないようでした。まず日本ではあり得ない光景です。

トイレ不足で不便でも
楽しく観られればいい!?

 現地で一番面白かったのは、スタジアムの構造です。

 ナタールとマラカナンに入りましたが、スタンドとフィールドが予想していたよりも接近していました。ナタールでは、私が座った「砂かぶり席」からは、それこそライン際にいる選手たちが目の前を駆けていて、長友選手の表情がはっきり分かりました。

 ブラジルでは、しばしばサポーター同士の衝突があると聞いていましたし、選手の安全確保という点では明らかにリスクが大きいと感じました。施設面では、トイレですら不足していて、私が観戦した別の試合では、ハーフタイム直後、反対側のスタンドが、観客がトイレから帰って来られないためにガラガラになっているということもありました。

 それでも、こうした設計・運営がされているのは、ブラジルでは、サッカーをいかに生で観戦するかという観点が重視されているからでしょう。マラカナンは8万人収容で、改装前は立ち見を含めて17万人が見ていた時代がありました。競技場の一体感を何よりも重視しているのです。

 日本と比べて違うのはもちろん、私はロンドン五輪で「聖地」ウェンブリー、女子W杯でフランクフルトにも行きましたが、やはり違います。ブラジル独特の観戦文化なのかもしれません。

previous page
2
nextpage
Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事


DOLSpecial

underline

話題の記事

鈴木 寛 [東京大学・慶応義塾大学教授、元文部科学副大臣]

すずき・かん/元文部科学副大臣、前参議院議員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、86年通産省入省。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。超党派スポーツ振興議連幹事長、東京オリンピック・パラリンピック招致議連事務局長。大阪大学招聘教授、中央大学客員教授、電通大学客員教授。13年7月の参院選で落選。同年11月、民主党離党。


鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

インテリジェンスとは「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。いまの日本社会を漫然と過ごしていると、マスメディアから流される情報の濁流に流されていってしまいます。本連載では既存のマスメディアが流す論点とは違う、鈴木寛氏独自の視点で考察された情報をお届けします。

「鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」」

⇒バックナンバー一覧