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内科医・酒井健司の医心電信

厚生労働省が豚の生肉や生レバーの飲食店などでの提供を禁止する方針を決めました。

http://apital.asahi.com/article/news/2014062100007.html

「牛の生レバー提供が禁止されてから、代わりに豚の生レバーを出す店が相次いでいた」のだそうです。これまで豚の生レバーが禁止されていなかったのは、安全だとみなされていたからではなく、豚を生で食べると危ないなんてことはわざわざ言うまでもなかったからだと思います。

豚の生食には、サルモネラ属菌などの細菌のほか、有鉤条虫などの寄生虫、E型肝炎などのウイルスに感染するリスクがあります。以前、『「レバ刺しは牛がダメだから豚」のトンデモ』にて、『「禁止されていないから」とあまりにリスクに無頓着な人が増えれば、「豚にも規制が必要だ」という話になる』と述べたことがあります。どうもそんな感じのようです。

牛の生レバーのときと同様に、「禁止は行き過ぎである」という声もあるようです。確かに、何を食べるかは個人の自由です。何を食べてよいか、何を食べてはいけないかを国が指図するのは余計なお世話です。

ただ、個人が豚の生レバーを食べることが禁止になるのではなく、飲食店で提供するのが禁止になるのです。飲食店で提供する以上は、一定の安全性が求められます。消費者も、飲食店が提供するものは安全であると誤認しうるでしょう。

「新鮮だから安全」という主張も見られますが論外です。一般的な細菌による食中毒と違って、寄生虫やE型肝炎はどんなに新鮮であってもリスクはあります。「新鮮だから安全」などと主張する勉強不足の飲食店が存在すること自体が、規制が必要であることを示しています。

「これまで豚の生レバーを提供していたが大丈夫だった。食中毒なんて起こしていない」と主張するお店もあるでしょう。しかし、豚の生食のリスクの一つであるE型肝炎のことがわかってきたのはごく最近で、しかも、潜伏期間は2~9週間と長いのです。これまで大丈夫だったのではなく、単に感染事例が気付かれなかっただけである可能性が高いと思われます。

(豚の生レバーを食べることに、リスクに見合うほどの価値があるとは個人的にはまったく思いませんが)どうしても食べたい人が食べる自由はあっていいでしょう。しかしそれは飲食店で提供するのとはまた別の問題です。飲食店での豚の生レバーの提供が規制されるのは当然であると私は考えます。

酒井健司 (さかい・けんじ)

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務しています。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていないのです。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えて行くのが、このブログの狙いです。

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