2014年5月9日、アジア歴訪を終えたばかりの米国オバマ大統領はデータ法案(Data Act: the Digital Accountability and Transparency Act of 2014)に署名しました。米国最初のオープンデータに関する法律、「データ法」が成立した瞬間です。
この法律は、米国連邦政府の支出に関して、標準化技術を用いたデータ公開を義務化するものであり、以下を目的としています。
特にこれまでの、文書による報告ベースの事務から、構造化されたデータを利用した業務改革と徹底した情報開示を義務化している点が注目に値します。
これにより、ⅰ)民主主義的な説明責任、ⅱ)公的部門のマネジメント、ⅲ)コンプライアンス確保の自動化をもたらすことが期待されています。
現在、多くの国で「オープンデータ」への取り組みが進められています。昨年6月の英国ロック・アーンでのG8で合意された「G8オープンデータ憲章」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/densi/dai4/sankou8.pdf)は、その流れを決定的にした点で画期的なものと言えます。政府部門に閉ざされたデータを「オープンデータ化」することで、潜在的な資源として有効活用し、その国の経済、産業の成長に寄与する、というのがそこに込められた基本的考え方です。さらに昨年末には、この憲章の実現のための日本政府のアクションプランが公開されました(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/densi/)。
同憲章でも国の予算データは最も重要な「キーデータセット」として位置づけられています。日本政府のアクションプランでは、以下のように記載されています。
国の予算 現状:公開済み、今後の予定:オープンライセンスの下、オープンフォーマットで機械判読可能なデータを利用可能とする
今回の米「データ法」は、こうしたグローバルな動きとも完全に一致したものです。ただし、これまでのオープンデータ推進の議論は、ともすれば行政サービスとしてのデータ公開の議論にとどまり、行政機関の内部プロセスの改革と結びつけた議論まではたどり着いていません。この点、米「データ法」は、納税者へのより詳細かつ整合性の取れた情報提供、政府機関のマネジメント改革、政府機関への民間からの報告実務の負荷軽減にまで踏み込んで「義務化」している点で特筆されるものと言えます。
米国では「データ法」に続いて、金融・資本市場分野での透明性確保のための法案についての議論が始まろうとしています。「データ法」は米連邦内での議論ですが、投資家、金融業界と各監督機関との間の報告業務の高度化が同様に法制化されれば、米国内の議論にとどまらず、ドッド・フランク法などのようにグローバルな金融・資本市場に大きな影響を与えることが予想されます。
米「データ法」の成立は、「オープンデータ化」の流れをさらに加速し、その影響力を大きく高めるものとなるでしょう。また、この動きの底流には、ポスト・リーマン時代のグローバルなインフラ再構築の動きがあることは疑うことができません。
(出典:「The US Data Act Becomes Law」 Interactive Business Reporting June 2014)
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大槻 文彦(おおつき ふみひこ)
(株)富士通総研 ビジネスアナリティクス事業部 プリンシパルコンサルタント
【略歴】
1982年 東京大学教養学部文化人類学分科課程卒、富士通株式会社入社、2007年 株式会社富士通総研へ出向、2010年 一般社団法人XBRL Japan 理事副会長
【執筆活動】
「XBRLが拓く会計情報開示」(2009年 中央経済社)共同執筆