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シカゴ・ブルース (ID:okrchicagob)
1948年生れ(65歳♂)。国語と理科が好き。ことばについては子供のころからずっと関心を抱いていました。20代半ばに三浦つとむの書に出会って以来言語過程説の立場からことばについて考え続けています。現在は39年間続けた自営(学習塾)の仕事を辞め個人的に依頼されたことだけをこなす日々です。
シカゴ・ブルースというハンドルネームは長いため、コメント等では略称の シカゴ を使うこともあります。
ふしぎだと思うこと
これが科学の芽です
よく観察してたしかめ
そして考えること
これが科学の茎です
そうして最後になぞがとける
これが科学の花です
朝永振一郎
われわれは人間が『意識』をももっていることをみいだす。しかし『精神』は物質に『つかれて』いるという呪いをもともとおわされており、このばあいに物質は言語の形であらわれる。言語は意識とおなじようにふるい――言語は実践的な意識、他の人間にとっても存在し、したがってまた私自身にとってもはじめて存在する現実的な意識である。そして言語は意識とおなじように他の人間との交通の欲望、その必要からはじめて発生する。したがって意識ははじめからすでにひとつの社会的な産物であり、そして一般に人間が存在するかぎりそうであるほかはない。(マルクス・エンゲルス『ドイツ・イデオロギー』古在由重訳・岩波文庫)
ことばは、人間が心で思っていることをほかの人間に伝えるために使われています。ですから人間の心のありかたについて理解するならばことばのこともわかってきますし、またことばのありかたを理解するときにその場合の人間の心のこまかい動きもわかってきます。
このように、人間の心についての研究とことばについての研究とは密接な関係を持っていて、二つの研究はたがいに助け合いながらすすんでいくことになります。一方なしに他方だけが発展できるわけではありません。
…こうして考えていくと、これまでは神秘的にさえ思われたことばのありかたもまったく合理的だということがおわかりになるでしょう。(◆三浦つとむ『こころとことば』季節社他)
〔2004.03.15,16記〕
▼ 認識についての覚書(1)~(7)をまとめて読む。
〔注記〕 「ことば・認識についての覚書」からの転載です。転載にあたって多少の体裁変更を行ないました。知見としては古いものもありますが大筋は変わっていないと思います。
言語(規範)を獲得する前の幼児は経験によってさまざまなものや現象、および複数のもののあいだの関係などから共通する性質や構造を抽出して類別しそれらをカテゴリーとしてとらえている。たとえば、自分の世話をしてくれるものと同じような姿かたちをしていて自分に話しかけてくるもの〔人間〕や4本の足でしなやかに移動するもの〔動物〕、地面に生えている緑色のもの〔草〕、…などのように「~のなかま」として概括してとらえているのである。このような把握は同じカテゴリーに属するものにも差異があって、ある程度の広がり(外延)を持っているという認識と、にもかかわらず同じカテゴリーに属するものはみな一定の共通性(内包)を持っているという認識を媒介にしてなされる。
さらに経験を経た幼児の認識は同じカテゴリーに属するものの中にある差異にもさらに狭い範囲の共通性があるという新しい認識の段階に進む。こうしてあるカテゴリーの中にもう一つ下のレベルのカテゴリーが成立する。カテゴリーの階層化は下に進むばかりでなく上にも進む。それまでは異なったカテゴリーであるととらえていた複数のカテゴリーが、カテゴリー間の共通性の認識からから実はもっと上位の同じカテゴリーに属するものであるという認識に至る。言語獲得以前の幼児の認識能力はこのようにものや現象などを類別するだけでなく階層化して分類するという段階にまで進む。
類別は差異と共通性をとらえる認識能力であるが、分類は差異や共通性それぞれの中にもまた差異や共通性があるということをとらえる認識能力である。
カテゴリーの階層は概念の階層と直接に関係している。「~のなかま」という概括は「~」に属するすべてのものに共通する性質あるいは構造の認識によって可能になる。そしてこの認識は「~」の概念そのものである。したがってカテゴリーの階層構造は概念の階層構造と相似である。なぜならカテゴリーの認識がなければ概念の認識は成立しないからである。もっといえばカテゴリーの認識⇔概念の認識なのである。発達心理学の知見によれば言語獲得に踏み出そうとしている段階の幼児はすでにカテゴリーを階層的な構造として認識しているという。したがってこの段階の幼児は概念の階層構造的な性格をすでに認識できていると考えられる。
カテゴリーの認識には内包と外延があった。概念の内包・外延もこれらと相似のものである。たとえばリンゴの概念における内包とはリンゴ一般に共通する属性の認識であり、それはリンゴのカテゴリーを規定するリンゴの一般概念そのものである(リンゴってどんなもの?というときの「どんな」に相当する認識)。これに対してリンゴの概念の外延とはリンゴとしての共通属性をもつすべてのものの認識であり、それはリンゴのカテゴリーに属するすべての個別概念(すべてのリンゴ)のことである。これを数学的にいえば、カテゴリーとは集合であって、集合における内包とはその集合の定義であり、外延とはその集合に属するすべての要素である、ということになる(集合の表現形式には定義形式と列記形式の二つがある。この二つは集合を内包と外延のそれぞれで表現したものである)。したがってリンゴの概念における内包とはいわばリンゴの定義であり、外延とはリンゴのカテゴリーの最大限の拡がりの認識であるともいえる。そして、「りんごはくだものである」と表現されたとき、「りんご」「くだもの」ということばによって我々が想起するものはリンゴ・クダモノの一般概念(内包)であり、かつなんらかのリンゴ・クダモノの個別概念(外延から取り出したもの)なのである。
カテゴリーの階層化(概念の階層化)は必然的に分類の体系化に向かう。分類の体系においては最上位のカテゴリー以外のカテゴリーは必ず上位のカテゴリーに含まれ、最下位のカテゴリー以外のカテゴリーは必ず下位のカテゴリーを含むという包含関係にある([上位カテゴリー]⊃[下位カテゴリー])。したがって、中位のカテゴリーは自分より下位のカテゴリー全体を包括しているが、それ自身はまたその上位にあるカテゴリーからみれば単なる一員(一要素)にすぎない。カテゴリーはこのような二面性をもっているから、カテゴリーを規定する概念もまたこのような二面性をもっている。(中位の)概念は自分より下位にあるすべての概念に共通する部分を抽出したもの、つまりより抽出度の高いものであるが、自分よりも上位にあるすべての概念からみればより抽出度の低い概念にすぎない。概念はこのように上位の概念からみればその特殊なものであり、下位の概念からみれば普遍的である。したがって一般に概念は上位概念からみれば特殊概念であり、下位概念からみれば普遍概念であるという二面性をもっている(筆記用具という概念は、上位の文房具という概念からみれば特殊概念であるが、下位のペンという概念からみれば普遍概念なのである)。
◇◇◇ 2004.03.16/2004.03.17訂正・追記/2004.06.08書換 ◇◇◇
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● 表現された言語(本来の意味の言語)を単に言葉あるいは言語、ことば…のように表記しています。ソシュール的な意味の言語(言語規範ないし思考言語)はカッコつきで「言語」あるいは「言語langue」・「ラング」・「ことば」等と表記しています。(背景色つきで「言語」のように表記している場合もあります)
● 一般的な意味の概念を単に概念と表記し、ソシュール的な意味の概念(語の意義としての概念、いわゆるシニフィエ・語概念)はカッコつきで「概念」と表記します。(2006年9月9日以降)
● また、ある時期からは存在形態の違いに応じて現実形態・表象形態・概念形態のように用語の背景色を変えて区別しています(この文章では〈知覚形態〉も〈表象形態〉に含めています)。
● ソシュールの規定した用語を再規定し、次のような日本語に置き換えて表記します。詳細は「ソシュール用語の再規定(1)」を参照。
【規範レベルにおける再規定】
・シニフィアン → 語韻 (ある語音から抽出された音韻)
・シニフィエ → 語概念(語義) (ある語によって表わされるべき概念)
・シーニュ・記号 → 語規範(語観念)(ある語についての規範認識)
・記号の体系 → 語彙規範 (語すべてについての規範認識)
・言語 → 言語規範 (言語表現に関するすべての規範認識)
語概念・語韻は 語概念⇔語韻(語韻⇔語概念)という連合した形で語規範として認識されています。語規範はこのように2つの概念的認識が連合した規範認識です。ソシュールは「言語langue」を「諸記号」相互の規定関係と考えてこれを「記号の体系」あるいは「連合関係」と呼びますが、「記号の体系・連合関係」の実体は語彙規範であり、言語規範を構成している一つの規範認識です。規範認識は概念化された認識つまり〈概念形態〉の認識なのです。
なお、構造言語学・構造主義では「連合関係」は「範列関係」(「パラディグム」)といいかえられその意義も拡張されています。
● 語・内語・言語・内言(内言語・思考言語) について、語規範および言語規範に媒介される連合を、三浦つとむの主張する関係意味論の立場からつぎのように規定・定義しています。詳細は『「内語」「内言・思考言語」の再規定』を参照。(2006年10月23日以降)
・語 : 語規範に媒介された 語音⇔個別概念 という連合を背後にもった表現。
・内語 : 語規範に媒介された 語音像⇔個別概念 という連合を背後にもった認識。
・言語 : 言語規範に媒介された 言語音(語音の連鎖)⇔個別概念の相互連関 という連合を背後にもった表現。
・内言 : 言語規範に媒介された 言語音像(語音像の連鎖)⇔個別概念の相互連関 という連合を背後にもった認識・思考過程。
内語・内言は〈表象形態〉の認識です。
なお、上のように規定した 内言(内言語・内的言語・思考言語)、 内語とソシュール派のいうそれらとを区別するために、ソシュール派のそれらは「内言」(「内言語」・「内的言語」・「思考言語」)、「内語」のようにカッコつきで表記します。
また、ソシュールは「内言」つまり表現を前提としない思考過程における内言および内言が行われる領域をも「言語langue」と呼んでいるので、これも必要に応じてカッコつきで「内言」・「内言語」・「内的言語」・「思考言語」のように表記します(これらはすべて内言と規定されます)。さらに、ソシュールは「内語の連鎖」(「分節」された「内言」)を「言連鎖」あるいは「連辞」と呼んでいますが、まぎらわしいので「連辞」に統一します(「連辞」も内言です)。この観点から見た「言語langue」は「連辞関係」と呼ばれます。ソシュールは「内語」あるいは「言語単位」の意味はこの「連辞関係」によって生まれると考え、その意味を「価値」と呼びます。構造言語学では「言(話し言葉)」や「書(書き言葉)」における語の連鎖をも「連辞」と呼び、「連辞関係」を「シンタグム」と呼んでいます。詳細は「ソシュール「言語学」(1)~(4)」「ソシュール用語の再規定(1)~(4)」「ソシュール「言語学」とは何か(1)~(8)」を参照。
● さらに、ソシュールは内言における 語音像⇔個別概念 という形態の連合も「シーニュ・記号」と呼んでいるので、このレベルでの「シニフィアン」・「シニフィエ」についてもきちんと再規定する必要があります。
【内言レベルにおける再規定】
・シニフィアン → 語音像(個別概念と語規範に媒介されて形成される語音の表象)
・シニフィエ → 個別概念(知覚や再現表象から形成され、語規範の媒介によって語音像と連合した個別概念)
・シーニュ・記号 → 内語
・言語 → 内言
ソシュールがともに「シーニュ・記号」と呼んでいる2種類の連合 語韻⇔語概念(語規範)と 語音像⇔個別概念(内語)とは形態が異なっていますのできちんと区別して扱う必要があります。
● また、実際に表現された言語レベルにおいても、語音⇔個別概念 という形態の連合が「シーニュ・記号」と呼ばれることもありますので、このレベルでの「シニフィアン」・「シニフィエ」についてもきちんと再規定する必要があります。
【言語(形象)レベルにおける再規定】
・シニフィアン → 語音(個別概念と語規範に媒介されて実際に表現された語の音声。文字言語では文字の形象)
・シニフィエ → 表現された語の意味。個別概念を介して間接的に語と結びついている(この個別概念は語規範の媒介によって語と連合している)
・シーニュ・記号 → 語(表現されたもの)
・言語 → 言語(表現されたもの)
● 語音・言語音・語音像・言語音像・語韻についての詳細は「言語音・言語音像・音韻についての覚書」を、内言・内語については「ソシュール用語の再規定(4)――思考・内言」を参照して下さい。また、書き言葉や点字・手話についても言語規範が存在し、それらについても各レベルにおける考察が必要ですが、ここでは触れることができません。