法制審:司法取引 冤罪生む懸念も 捜査機関には「武器」

毎日新聞 2014年06月30日 22時46分(最終更新 07月01日 00時29分)

 司法取引と同様、捜査機関の権限強化とされるのが、電話やメールでの交信を対象とした「通信傍受」の対象犯罪の拡大だ。現在の薬物犯罪、銃器犯罪、組織的殺人、集団密航の4種類から、新たに組織性が疑われる▽放火や殺人、傷害▽逮捕監禁、誘拐▽窃盗や強盗▽詐欺や恐喝▽児童買春・ポルノ禁止法違反−−などの捜査にも使えるようになる。

 通信傍受は欧米各国などでも導入されているが、日本に比べると対象犯罪の範囲が広い。日本は傍受件数が年間数十件単位だが、米国や英国では千件単位だ。特別部会では、警察の委員が更なる対象拡大を求めたが、通信傍受法成立(1999年)時からプライバシー侵害などの観点で根強い批判があり、弁護士の委員の反発を招いた。

 法務省は30日に示した取りまとめ案で、4月の試案に盛り込んでいた出資法違反を「必ずしも必要性が高いとは言えない」として対象から除外して配慮した。それでも30日の会議では、「まだ減らすことができるのではないか」「歯止めをかけるようなルールが必要ではないか」といった意見が出た。

 通信傍受の手法も見直される。特定の機材を使えば通信事業者の担当者の立ち会いも不要とし、警察の施設で聴くことも認める。ただ、振り込め詐欺の拠点や、対立抗争時の暴力団事務所などを念頭に、警察が求めていた「会話傍受」(盗聴)は、通信傍受以上にプライバシーを侵害する危険性が高いなどとして根強い抵抗があり、制度化は見送られる方向だ。

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