法制審部会:司法取引導入へ 裁判員事件を全面可視化了承

毎日新聞 2014年06月30日 21時49分(最終更新 06月30日 23時25分)

捜査・公判協力型協議・合意制度(司法取引)のイメージ
捜査・公判協力型協議・合意制度(司法取引)のイメージ

 取り調べの録音・録画(可視化)の制度化などを議論してきた法制審議会(法相の諮問機関)の「新時代の刑事司法制度特別部会」は30日、裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件で全過程可視化を義務付ける法務省の取りまとめ案を、大筋で認めた。他人の犯罪の捜査に協力した容疑者や被告を有利に取り計らう「捜査・公判協力型協議・合意制度」(司法取引)や通信傍受の対象犯罪拡大も法制化される見通しとなった。

 部会は大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を受け、2011年6月に設置された。早ければ7月9日の次回会議で採決が行われる可能性もあり、法務省は来年の通常国会への関連法案提出を目指す。

 取りまとめ案によると、裁判員対象事件と、特捜部などによる検察独自捜査事件で、逮捕・勾留された容疑者の取り調べの全過程を可視化する。裁判員対象事件では警察の取り調べも対象となるが、録音・録画で容疑者から十分な供述を得られないと取調官が判断した場合や、指定暴力団構成員による犯罪などは例外とする。

 現在は薬物や銃器犯罪などに限られている通信傍受の対象犯罪は組織的な詐欺や窃盗などにも拡大。新たに導入される司法取引は、贈収賄や詐欺、薬物事件などを対象とする。一部の委員は捜査機関の権限拡大に懸念を示したが、大きな異論は出なかった。

 一方で可視化については弁護士や有識者の委員から「対象事件が全体の2%で少なすぎる」と批判があり、法改正から一定期間経過後の見直し規定も設ける。取りまとめ案の「付帯事項」として「実務上の運用で可能な限り幅広い範囲の録音・録画を期待する」などと記載した。【和田武士】

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