After Effectsの作業スピードを上げるコンポジションの組み方
- 2014/07/13
After Effectsの作業スピードを上げるためのTipsはいろいろあると思います。しかし、まず最初にやるべきなのは「シンプルで軽いコンポジション」を組むということです。あまりにも単純に聞こえるかもしれませんが、本当に大切なことです。シンプルで軽いコンポジションは、確実にレンダリングを速くし、作業を快適なものにします。今回は、そんな作業スピードを上げるためのコンポジションの組み方を紹介したいと思います!
良いコンポジションを組むためには、After Effectsのレンダリング順序(Render order)を知る必要があります(1)。After Effectsがどのように画像を処理しているのか、以下の3つのポイントを押さえてください。
1. コンポジション内のレンダリング順序
コンポジションは「2つの画像を1つに合成する」という処理を繰り返しているに過ぎません。最も下のレイヤーから計算が始まり、下から1レイヤーずつ順番に計算が進みます。

2.レイヤー内のレンダリング順序
レイヤーの中では、[マスク]→[エフェクト]→[トランスフォーム]の順で処理されます。上から下へ計算が進みます。エフェクトやマスク内のアイテムも、上から順に処理されます。

3.プリコンポジションのレンダリング順序
コンポジションのネスト化(プリコンポーズ)を行った場合、プリコンポジション内のレイヤーは最初に計算されます。プリコンポジションレイヤーは事前に「合成済み」の1枚の画像になっていると考えてください。Pre(事前の)Composition(合成)という名前の通りです。

※ただし、[コラップストランスフォーム]をONにした場合は例外で、事前に合成されません。レンダリング順序はプリコンポーズしていないときと変わりません。コラップスの小さなスイッチで、レイヤーの合成順序は全く変わってしまうので要注意です。
なぜこのような内部処理を気にする必要があるのか不思議に思われるかもしれません。しかし、レンダリング順序を理解すればどのようなコンポジションが効率的か見えてくるのです。
では、理想的なコンポジションの具体例を6つほど示してみます。良い例、悪い例を合わせて紹介します。
複雑すぎるカラコレは、コンポジションを難解にするので避けるべきです。初心者に多い間違いです。

エフェクトが多いと、どのエフェクトがどのように結果に影響しているのか、因果関係が分かりにくくなります。カラコレの修正が必要になった際には混乱し、多くの時間を無駄にします。また、むやみに「暗くした後に明るくする」とか「明るくした後に暗くする」というような逆の処理を行うと、クオリティーの低下を招く場合もあります。
カラコレは可能な限りシンプルな方が良いでしょう。エフェクトが1つか2つで済むなら、それに越したことはありません。

なお、調整レイヤーで画面全体の色を変えるような「フィルターワーク」も同様の注意が必要です。フィルターワークも必要最低限にとどめ、極力シンプルで分かりやすいものにした方が無難です。
複数のレイヤーに同じ効果を加えたい場合、エフェクトを複数レイヤーに適用するのは非効率です。

このようなコンポジションは、各レイヤーでエフェクトの計算が繰り返されているので無駄に重くなります。エフェクトの修正が必要になった際も手間が多く、ミスが発生しやすくなります。
調整レイヤーかプリコンポジションを使い、先にレイヤーを統合してからエフェクトを適用しましょう。

この仕組みなら、エフェクトの計算は1回だけなのでレンダリングは速くなります。修正するときも1ヶ所直せば良いので、とても効率的です。
マスクを切ったレイヤーをCtrl+D(Command+D)で複製するというのは、初心者ユーザーがよくやってしまう間違いです。

このようなコンポジションでは、マスクを修正する際にすべてのレイヤーを変更しなければならないので手間が多く、ミスが発生しがちです。また、何度もマスクの計算が発生しているので、レンダリングも無駄に重くなります。
効率的に作業したいなら、先にマスクを切ったプリコンポジションを作成しておいて、プリコンポジションレイヤーとして使いまわすべきです。

この構造ならマスクは1ヶ所直せばすべてのレイヤーに反映されるので、快適に作業できます。さらに、マスクの計算は1回だけなのでレンダリングも速くなります。
画ブレ、パン、ズームなどの比較的小さなカメラワーク(画面動)をつけたい場合について言えば、複数のレイヤーに親子付けを行うことは効率的ではありません。モーションブラーのスイッチが入っている際は要注意です。

このようなコンポジションでは、モーションブラーの計算が何度も行われるため、レンダリングが重くなっています。
プリコンポジションでレイヤーを統合してからアニメーションさせる方が、計算は少なくて済みます。

もちろん、これは「ちょっとしたカメラワーク」を付ける場合の話です。巨大なレイヤーをダイナミックに動かすなら、まったく話が違ってきます。そのような場合は、これから説明する5番目と6番目のTipsがヒントになると思います。
スケールを縮小しているレイヤーにエフェクトを適用するのは、効率的ではありません。

エフェクトの計算はトランスフォームより先に行われるので、無駄に多いピクセルに対してエフェクトを計算させることになります。レンダリングは必要以上に重くなります。
こういった場合は、プリコンポジションで先に画像を縮小してからエフェクトを適用します。

場合によっては調整レイヤーでも対応できます。重要なのは、少ないピクセルに対してエフェクトを計算させ、レンダリングを軽くするということです。
前の項目と同じようなことなのですが、コンポジションの外側にはみ出すほど大きいレイヤーにエフェクトを適用するのも効率的ではありません。

このようなときも、プリコンポジションで先に必要なサイズにクロップ(切り抜き)してから、エフェクトを適用します。

場合によっては調整レイヤーでも対応可能です。ポイントはトランスフォームよりも後にエフェクトを計算させることです。
いかがでしたか?今回はAfter Effectsで「シンプルで軽いコンポジション」を組むということを解説してみました。
◆レンダリング順序を気にして作業すると……
◆無駄な計算を省略し、レンダリングを速くできる!
◆シンプルで分かりやすく、修正しやすい仕組みにできる!
もちろん、内部処理なんて気にしなくても作業できます。画づくりもできます。しかし内部処理を考えて作業すれば、レンダリングは速くなり、修正のしやすいコンポジションを組むことができるわけです。より良い仕事をするためには、大切なことだと思います。効率的なコンポジションで作業すれば、きっとワンランク上のクオリティーを目指せるはずです!
After Effectsのレンダリング順序
良いコンポジションを組むためには、After Effectsのレンダリング順序(Render order)を知る必要があります(1)。After Effectsがどのように画像を処理しているのか、以下の3つのポイントを押さえてください。
1. コンポジション内のレンダリング順序
コンポジションは「2つの画像を1つに合成する」という処理を繰り返しているに過ぎません。最も下のレイヤーから計算が始まり、下から1レイヤーずつ順番に計算が進みます。
2.レイヤー内のレンダリング順序
レイヤーの中では、[マスク]→[エフェクト]→[トランスフォーム]の順で処理されます。上から下へ計算が進みます。エフェクトやマスク内のアイテムも、上から順に処理されます。
3.プリコンポジションのレンダリング順序
コンポジションのネスト化(プリコンポーズ)を行った場合、プリコンポジション内のレイヤーは最初に計算されます。プリコンポジションレイヤーは事前に「合成済み」の1枚の画像になっていると考えてください。Pre(事前の)Composition(合成)という名前の通りです。
※ただし、[コラップストランスフォーム]をONにした場合は例外で、事前に合成されません。レンダリング順序はプリコンポーズしていないときと変わりません。コラップスの小さなスイッチで、レイヤーの合成順序は全く変わってしまうので要注意です。
なぜこのような内部処理を気にする必要があるのか不思議に思われるかもしれません。しかし、レンダリング順序を理解すればどのようなコンポジションが効率的か見えてくるのです。
では、理想的なコンポジションの具体例を6つほど示してみます。良い例、悪い例を合わせて紹介します。
1.カラコレはなるべくシンプルにする
複雑すぎるカラコレは、コンポジションを難解にするので避けるべきです。初心者に多い間違いです。
エフェクトが多いと、どのエフェクトがどのように結果に影響しているのか、因果関係が分かりにくくなります。カラコレの修正が必要になった際には混乱し、多くの時間を無駄にします。また、むやみに「暗くした後に明るくする」とか「明るくした後に暗くする」というような逆の処理を行うと、クオリティーの低下を招く場合もあります。
カラコレは可能な限りシンプルな方が良いでしょう。エフェクトが1つか2つで済むなら、それに越したことはありません。
なお、調整レイヤーで画面全体の色を変えるような「フィルターワーク」も同様の注意が必要です。フィルターワークも必要最低限にとどめ、極力シンプルで分かりやすいものにした方が無難です。
2.同じエフェクトはまとめて適用する
複数のレイヤーに同じ効果を加えたい場合、エフェクトを複数レイヤーに適用するのは非効率です。
このようなコンポジションは、各レイヤーでエフェクトの計算が繰り返されているので無駄に重くなります。エフェクトの修正が必要になった際も手間が多く、ミスが発生しやすくなります。
調整レイヤーかプリコンポジションを使い、先にレイヤーを統合してからエフェクトを適用しましょう。
この仕組みなら、エフェクトの計算は1回だけなのでレンダリングは速くなります。修正するときも1ヶ所直せば良いので、とても効率的です。
3.マスクを切ったレイヤーを複製しない
マスクを切ったレイヤーをCtrl+D(Command+D)で複製するというのは、初心者ユーザーがよくやってしまう間違いです。
このようなコンポジションでは、マスクを修正する際にすべてのレイヤーを変更しなければならないので手間が多く、ミスが発生しがちです。また、何度もマスクの計算が発生しているので、レンダリングも無駄に重くなります。
効率的に作業したいなら、先にマスクを切ったプリコンポジションを作成しておいて、プリコンポジションレイヤーとして使いまわすべきです。
この構造ならマスクは1ヶ所直せばすべてのレイヤーに反映されるので、快適に作業できます。さらに、マスクの計算は1回だけなのでレンダリングも速くなります。
4.小さなカメラワークを行う際は複数の親子付けを避ける
画ブレ、パン、ズームなどの比較的小さなカメラワーク(画面動)をつけたい場合について言えば、複数のレイヤーに親子付けを行うことは効率的ではありません。モーションブラーのスイッチが入っている際は要注意です。
このようなコンポジションでは、モーションブラーの計算が何度も行われるため、レンダリングが重くなっています。
プリコンポジションでレイヤーを統合してからアニメーションさせる方が、計算は少なくて済みます。
もちろん、これは「ちょっとしたカメラワーク」を付ける場合の話です。巨大なレイヤーをダイナミックに動かすなら、まったく話が違ってきます。そのような場合は、これから説明する5番目と6番目のTipsがヒントになると思います。
5.縮小するレイヤーにエフェクトを適用しない
スケールを縮小しているレイヤーにエフェクトを適用するのは、効率的ではありません。
エフェクトの計算はトランスフォームより先に行われるので、無駄に多いピクセルに対してエフェクトを計算させることになります。レンダリングは必要以上に重くなります。
こういった場合は、プリコンポジションで先に画像を縮小してからエフェクトを適用します。
場合によっては調整レイヤーでも対応できます。重要なのは、少ないピクセルに対してエフェクトを計算させ、レンダリングを軽くするということです。
6.はみ出すレイヤーはクロップしてからエフェクトを適用する
前の項目と同じようなことなのですが、コンポジションの外側にはみ出すほど大きいレイヤーにエフェクトを適用するのも効率的ではありません。
このようなときも、プリコンポジションで先に必要なサイズにクロップ(切り抜き)してから、エフェクトを適用します。
場合によっては調整レイヤーでも対応可能です。ポイントはトランスフォームよりも後にエフェクトを計算させることです。
まとめ
いかがでしたか?今回はAfter Effectsで「シンプルで軽いコンポジション」を組むということを解説してみました。
◆レンダリング順序を気にして作業すると……
◆無駄な計算を省略し、レンダリングを速くできる!
◆シンプルで分かりやすく、修正しやすい仕組みにできる!
もちろん、内部処理なんて気にしなくても作業できます。画づくりもできます。しかし内部処理を考えて作業すれば、レンダリングは速くなり、修正のしやすいコンポジションを組むことができるわけです。より良い仕事をするためには、大切なことだと思います。効率的なコンポジションで作業すれば、きっとワンランク上のクオリティーを目指せるはずです!
参考文献
1. Adobe Systems Incorporated. "Adobe After Effects * プリコンポーズ、ネスト化およびプリレンダリング" http://helpx.adobe.com/jp/after-effects/using/precomposing-nesting-pre-rendering.html (参照 2014-07-13).
1. Adobe Systems Incorporated. "Adobe After Effects * プリコンポーズ、ネスト化およびプリレンダリング" http://helpx.adobe.com/jp/after-effects/using/precomposing-nesting-pre-rendering.html (参照 2014-07-13).