小林恵士
2014年7月11日11時15分
(コバケーのブラジル入門)
ブラジルと言えば、アマゾンですね。そしてアマゾンと言えば、ピラニア。釣って、刺し身で食べられるそうです。日本では、動物を食らい尽くす凶暴な魚のイメージですが、地元の人はふつうに食べてるんです。食べてみたいっすね。
マナウス在住の通訳さんから、「弟が小指の先をスパッといかれた」という話を聞き、アマゾンでケジメ小指になるのは嫌だな~と思いつつ、ブラジル北部のマナウスに向かいました。W杯の会場でもあった町です。
■奇景、湖上の枯れ木の林
釣りのポイントは、マナウスから北東に130キロほどのところにある「バウビーナ湖」。アマゾン川にそそぐウァトマン川上流で、ガイドの小野木儀行さん(60)によると、20年ほど前、水力発電のために川をせき止め、ダム湖になったそうです。湖と言っても、ここはアマゾン。広さは2360平方キロ。琵琶湖の3・5倍です。
ボートで北上すると、湖面から木が少しずつ突き出ています。川をせき止めたために沈んだ木ですが、高さ30メートルにもなるよう大きな木々なので、すぐには倒れず残っています。日本のダムでも起きることですが、規模が大きいためか、湖上に白い枯れ木の林という感じで、見たこともない光景になっています。
沈む前に丘だった場所は、沈みきらず残っていて、小さな島があちこちに浮かぶような地形になっています。その島の岸辺周辺が、魚が集まるポイントだそうです。
■釣り糸の先端はワイヤ
ここで主に釣れる魚は、ピラニアのほかにトゥクナレという魚。身が柔らかく、地元の人はこちらの方を好んで食べます。ルアー釣りを楽しめるため、愛好家も多いそうです。
ピラニアは、ブラックピラニアという種類で、大きいもので2キロ超。大人の両手のひらを広げたくらいの大きさがあります。
トゥクナレ釣りを少し体験した後、すぐにピラニア釣りに挑戦。エサはニワトリの心臓です。釣り糸の先端部分10センチほどは、かみ切られないようワイヤに切り替えます。
湖面から2メートルほどのところに糸を垂らし、待ちます。さおごとぐいっと下に引っ張られるような当たりがあり、引き上げるとエサをとられていること数回。約2時間後にやっと1匹釣れました。重さは1キロ弱。鋭い歯もさることながら、あごの部分がとてつもなく硬いです。このあごで、かみついた後に左右に振るらしく、新品のワイヤが直角に曲がっています。
■姿造り、焼き魚、海鮮?丼 お味は
小島にある漁師小屋で、ガイドの小野木さんが調理してくれました。
小骨が多いので、3ミリ程度に薄く切ります。「ザクッザクッ」という音が聞こえます。まず、刺し身で食べてみたところ、白身で甘みがあります。思ったより柔らかくて、薄く切っているためか、小骨もいい食感になります。丼メシにのせ、わさびじょうゆで海鮮丼風にしてみると、川魚の臭みもまったく感じません。焼いた方は、「小骨がある太刀魚」のような味です。
地元の人はどうやって食べているのか。船頭のフランシスコさん(57)に聞いてみました。
焼く、煮る、揚げるといった調理法で、月に数回は食卓にのぼるそうです。「サシミにはしないね」とのこと。今回釣ったブラックピラニアより小さいシルバーピラニアの方が、身が柔らかくておいしいそうです。アマゾン川のずっと下流の町に住んでいた頃には食べる習慣はなかったけど、マナウスに移り住んでから食べるようになったといいます。
川魚を扱うレストランでは、すりつぶしてスープにしたり、身を2枚に切り分け、トマトやタマネギ、ジャガイモと一緒に煮たりするメニューがあります。こちらもおいしそうです。
見た目は怖いですが、アマゾン流域に住む人にはなじみ深い魚なんですね。そう思うと、凶暴なイメージは薄らぎます。かみつかれるより、かみついたわけだし。「ちょっと歯がとがってる魚」くらいの印象に変わりました。(小林恵士)
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