スノーデン氏ロシア亡命1年を前に米諜報機関、ドイツでスパイ事件発覚
ドイツ政府はウクライナ危機やシリア、イラク危機、国内育ちのイスラム過激派によるテロなどの情報収集でアメリカ政府とは緊密な協力関係があり、両国ともに互いに欠かせない相手だ。
今回の事態は単なる抗議や批判声明だけでは収まりきれない。兎角親米で知られるメルケル首相も怒りを示したが、ドイツ国民の強い怒りもあって、何らかの結果を導く対応を取らざるを得なくなっている。情報機関職員2人の国外退去処分は最初のその表れだ。
ドイツではスノーデン氏が公開したデータで米NSAがメルケル首相の携帯電話会話を盗聴・傍受していたことが昨年秋あきらかになった。
以来ドイツでは、この“NSA事件”の解明を求める世論の圧力を受け連邦議会で調査委員会が作られ、スノーデン氏の事情聴取を国内でするべきか否かなどが議論されている。
(スノーデン氏の公開データで日本政府、国連代表部なども通信がNSAによって盗聴・傍受されていたと明かになったが、怒りはおろか、殆ど問題にならなかったのとドイツの姿勢は全く異なる。たとえ親密な関係であっても、一線を越えたことには断固とした姿勢で臨む。ドイツには主権国家としての一つの信念がある)
アメリカ情報機関は、ドイツ連邦議会の動きも警戒して議会審議の情報も入手していたと指摘されている。
ドイツ国内では米欧間の自由貿易協定協議の見直しや、スノーデン氏のドイツ亡命を認めるべき、との声も出ている。
米独政府は揃って両国関係は最重要関係の一つであると認めており、直ちに協力関係にひびが入ることは無い。
そんな両国関係が弱くなっているオバマ大統領は、メルケル首相の携帯電話盗聴が発覚して直ぐにメルケル首相に「二度と行わない」と約束した。
一方ドイツ側はアメリカ政府・大統領からの明白な謝罪を求める姿勢は崩していない。ドイツ側の怒りは一層強まり米独関係は、ドイツ政府が2004年のイラク戦争への参戦を拒否して以来12年間で最悪になったと言える。
(イラク戦争時でも米独間の他の協力関係や貿易・通商関係は殆ど影響を受けなかった)
「親しき仲にも礼儀あり」。ドイツ政府の姿勢は相互信頼の上に立ってこその同盟関係である、と一つの規範を示している。
兎角、アメリカが云々という日本の政府や高官、そしてマス・メディア、ドイツ政府のようなケジメを少しは示すくらいの見識を望む。
(大貫康雄)
PHOTO by Laura Poitras / Praxis Films [CC-BY-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/3.0)], via Wikimedia Commons