韓国人には、噴出する中華民族主義の爆風にさらされてきた記憶がある。2008年の北京五輪で、中国の観衆は韓国の選手ばかりを狙ってからかった。聖火リレーでは、数千人の中国人がソウルの中心部で無法を働いた。中国軍の参謀総長が、韓国国防部(省に相当)の長官の前で長々と演説するという無礼な場面もあった。さらには、違法操業の中国漁船を韓国側が取り締まると、中国外務省の報道官が「文明的な法執行」を要求するという、盗っ人たけだけしい振る舞いまで見せた。
習主席が意を決して送ってきた親善のジェスチャーに水をさすつもりはない。しかし、都合のいい面ばかり主張し、ふたをしてやり過ごせるほど、韓中関係の基盤は平坦ではない。習主席は、日本の右傾化に対し、両国が共同戦線を張ることを提案した。しかし韓中間には、日本との関係に劣らず、ともすると日本よりも深刻な対立要因があふれている。
旅客船セウォル号の沈没事故で韓国海洋警察が対応に追われている間、西海(黄海)は違法操業中国漁船でいっぱいだった。離於島(中国名:蘇岩礁)をめぐる排他的経済水域(EEZ)交渉でも、中国は一寸たりとも譲歩する考えはないように見える。日本は、過去の原罪があることから、韓国が何か言えばぎくりとする様子は見せる。しかし、中国はそうではない。
習主席は、副主席だった2010年に、6・25戦争について「偉大な抗美援朝(米国に対抗して北朝鮮を助ける)戦争」と公に発言したことがある。6・25戦争から60周年の座談会で、中国軍の参戦について「(米軍の)侵略に立ち向かった正義の戦争だった」とも述べている。習主席が、6・25戦争に関する中国共産党の公式見解に従うのは当然だ。ただし、それだけ歴史認識の隔たりが大きいということを、韓国人は知るべきだ。
習主席がテーブル一杯に広げた「中国パーティー」を、韓国人が拒む理由はないが、酔い過ぎては困る。パーティーが終わった後にやって来る二日酔いのことを考え、韓国のペースを守った方がいいだろう。