
我々は普段あまり考えることなくレッテルをはりたがる。対象の属性を勝手に決めつけることで、複雑な事象も単純に理解してしまおうとする。偏見を作り上げる。
例えば常に問題を起こすような”トラブルメーカー”は、”暴力的で破壊的”な人物であるとのレッテルがはられる。礼儀正しい人は”温厚で良心的”な人物というレッテルがはられる。
ところが今回フランスのグルノーブル大学等の研究チームが発表した結果は、その偏見に新しい視点を加えるものとなった。それは、”礼儀正しい人ほど暴力的で破壊的”である。というものだ。
今回の実験ではまず、被験者を2つのグループにわけた。一つのグループは礼儀正しく、社会的に正しいとされる意見を持ち、一般的に好感をもたれるタイプの人たち。もう一つのグループは反体制運動家気質の意見を持ち、一般的に敬遠されやすいタイプの人たちだ。
彼らはそれぞれ、ミルグラムの服従実験を改良した実験にかけられた。(※
ミルグラムの服従実験とは、閉鎖的な環境下における、権威者の指示に従う人間の心理状況を実験したものである。)

その結果、礼儀正しく、社会的に正しい意見を持つとされていたグループの方が、研究者に”命令”されると、他人に対して”より残虐な行動”をとることがわかった。逆に反体制的言動の目立つもう一つのグループは、研究者の命令を聞き入れず、他人に残虐な行為を行う事を頑なに拒否することがわかった。
研究チームがより詳しくこれらのグループについて調べてみると、反体制思想を持つ人々はそうでない人に比べて「他人に危害を加えることを嫌う」ことがわかった。また彼らは”他者から命令されて” 破壊的行動をする事を嫌うこともわかった。

こういった反対運動家の人々が社会的に容認されにくい偏見を生み出してしまう理由は、「人にどう思われようと、自らが正しいと考えるモラルを貫き通す。」というところにあるのだという。
逆に礼儀正しい人が命令のままに残虐な行為を行うことができる理由としては、命令者を怒らせたくないという思いが強く、思考が停止してしまい、それが冷酷で非人道的な行為であってもいとわなくなるという。
勿論、だからといってトラブルメーカー的な性格を全て許してしまうべきではないが、特定の環境下では、社会的に評価されている人が豹変し暴力的になり、トラブルメーカー的な人物が温厚になる場合もあるので、ステレオタイプな偏見を払拭する必要がありそうだ。
via:psychologytoday・原文翻訳:riki7119
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