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2014年7月12日
【行方史郎、長野剛】 STAP細胞論文をめぐって審査のあり方が問われている博士号。近年、学生の「博士」離れが進んでいる。大学院の拡大政策で博士号取得者は30年前の3倍近くになったが、博士課程への進学率は低下の一方。優秀な学生ほど敬遠しがちとも指摘され、質の低下を憂える声もある。
「博士課程への進学を勧めると不安がる親もいる」。東京大理学系研究科長の五神真教授はこう語る。
2010年度に全国最多の2458人の博士号を出した東京大。修士課程から博士課程への進学率は01年の42%が11年は26%に落ち込んだ。研究開発を重視する9国立大と早稲田大、慶応大の計11校の平均でも11年までの10年間で23%から17%に下がった。
博士号取得者は、80年代初めは年6千人台だったのが10年には1万6千人に増えた。文部科学省が90年代に高度な専門知識を持った人材を増やそうと大学院の定員増加を促した結果だ。
しかし、06年前後をピークに低下に転じた。定員割れが慢性化している大学院も数多くあるとみられる。
理由に挙げられるのが将来への不安。博士課程修了者の就職率は12年度に67%。大学や研究機関のポストは限られ、「ポスドク」と呼ばれる任期が限られた研究員の採用も多い。
企業も学部や修士課程の新卒を採用する例が多く、博士を給与や待遇で優遇する会社も少ない。「専門分野に固執しがち」「視野が狭い」という声が漏れる。
文科省の科学技術・学術政策研究所が1292社を対象にした12年度の調査では、過去5年間で研究開発職で博士を採用していない企業が7割。「採用後に教育した方が効果的」や「すぐに活用できない」などが理由だった。
昨年、大学の学長や研究者ら1千人に「望ましい能力を持つ人材が博士課程を目指しているか」を尋ねたところ、10点満点に換算した評価で平均は3・2点だった。11年の3・5点から低下。「優秀な人材は修士課程から企業に就職する」などの意見が寄せられた。
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