ガザ:戦闘長期化へ…エジプト仲介、難航の見通し

毎日新聞 2014年07月10日 13時37分

 【エルサレム大治朋子、カイロ秋山信一】イスラエルとパレスチナ自治区ガザを拠点とするイスラム原理主義組織ハマスの戦闘が長期化しそうだ。イスラエルのネタニヤフ首相も9日、長期化を示唆。2012年の戦闘時に和平を仲介した隣国エジプトは、ハマスと関係が深いイスラム組織ムスリム同胞団主体の政権から軍出身の大統領になり、エジプトの仲介工作も難航が予想される。

 「速やかに停戦を実現できるように、暴力のエスカレートを止めるべきだ」。国営中東通信によると、エジプトのシシ大統領は8日、パレスチナ自治政府のアッバス議長と電話協議し、ガザ情勢に懸念を示した。エジプト外務省もイスラエルとハマスの双方に自制を求める声明を出した。

 エジプトメディアによると、シシ政権は隣接するガザが不安定化し、イスラム過激派の動きに収拾がつかなくなることを警戒しており、既に双方との接触を始めた。12年には当時のモルシ政権の仲介で8日間で停戦にこぎ着けた実績があり、国際社会にもエジプトに期待する声がある。

 ただ昨年のクーデター後、エジプトとハマスの関係は極端に悪化した。エジプト軍は、ガザと隣接するシナイ半島で過激派に対する掃討作戦を強化。武器や戦闘員の流入を防ぐため、ガザとの境界にある密輸トンネルを1000個以上破壊した。さらにシシ政権は同胞団を徹底的に弾圧。同胞団から派生したハマスに対しても「エジプトでのテロに関与している」と非難している。

 一方、イスラエルのネタニヤフ首相は9日、声明で「軍事作戦は時間を要するかもしれない」として戦闘が長期化する可能性を示唆。防御戦だと強調したうえで「ガザのハマスや他のテロ組織への攻撃を拡大した」と述べ、ハマスの攻勢が弱まらない限り戦闘を継続する方針を示した。

 ハマス指導者のメシャル氏はツイッターで「我々は戦闘激化は望んでいない。ネタニヤフ(首相)は強硬姿勢を変えよ」と述べ、イスラエル側が攻撃を停止しない限り戦闘を続ける姿勢を明確にした。

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