中東情勢:イスラエル軍空爆 ハマスはロケット弾応酬
毎日新聞 2014年07月09日 21時33分(最終更新 07月09日 21時46分)
イスラエル軍は9日、イスラム原理主義組織ハマスが拠点とするパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を継続し、ハマスとは別のイスラム過激派組織の幹部を暗殺するなど550カ所を空爆した。ハマスはイスラエル最大の商業都市テルアビブや聖地エルサレムのほか、約100キロ離れた北部ハデラにまで射程を延ばし、ロケット弾など225発を発射。双方とも戦闘規模を急激に拡大させている。【ガザ市(ガザ地区)で大治朋子】
地元メディアによると、イスラエルが軍事作戦の開始を宣言した8日未明以降、双方の攻撃でイスラエル側は1人が負傷し、ガザ側は31人が死亡、約200人が負傷している。
ガザ市のアルゼイトーン地区に入ると、ジハード(聖戦)を呼びかけるポスターがあちこちに掲げられていた。「ここはハマスのメンバーやイスラム過激派が多く住む住宅街です」。地元のパレスチナ人が教えてくれた。
イスラエルの攻撃でがれきの山と化した民家が見えてきた。メジド・ムハンマド・アルザブトさん(29)の自宅だ。現在は失業中だが、ハマスやイスラム過激派の戦闘員ではないという。8日午前3時半ごろ、隣家に住むいとこが大声で叫んだ。「イスラエルから電話があった。5分後に空爆すると言っている」。アルザブトさんは4人の子供のうち幼い2人を抱えて家から飛び出し、全力疾走した。数百メートル離れたところで、耳をつんざく爆発音がし、振り返ると自宅が炎上していた。
イスラエルは「民間人被害を回避するため」として空爆の直前に電話やチラシで避難を呼びかけることがある。「なぜ私の家を爆破し、避難を促したのか、さっぱり分からない」。アルザブトさんは意気消沈していた。
話を聞いていると、後方で爆発音が響いた。振り返ると後方300メートルあたりに黒煙が上がっている。「逃げろ」。一斉に走り出すと、その直後、今度は最初の爆撃地から200メートルほど離れた民家にイスラエル軍のミサイルが直撃し、一瞬にして建物が消えた。イスラム過激派の住む家だったとの情報がある。