中東情勢:突然空爆された ガザ地区、市民被害拡大
毎日新聞 2014年07月09日 12時16分(最終更新 07月09日 14時18分)
パレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム原理主義組織ハマスはイスラエルとの戦闘が本格化した8日未明以降、120発近くのロケット弾を発射した。イスラエル最大の商業都市テルアビブや、イスラム教やユダヤ教の聖地エルサレムにも着弾し、2人が負傷した。これに対しイスラエル軍はガザ地区約200カ所を空爆。「民間人被害の回避」を強調しているが、子供2人を含む23人が死亡、100人近くが負傷し、市民の犠牲拡大が懸念されている。【ジャバリア(パレスチナ自治区ガザ地区北部)で大治朋子】
8日午前、ガザ北部のカマル・アドワン病院を訪ねると、救急車が次々と負傷者を運び込んでいた。病院周辺ではイスラエル軍の空爆で「ドーン」という爆発音が断続的に響き、そのたびに市民が「今度はどこだ」と黒煙の上がる方向を確かめていた。
腰や足の手術を受けたばかりのムハンマド・ユーセフ・ガベンさん(16)は母親のイタフさん(41)と叔父のアラ・アデルさん(36)に付き添われ、ベッドの上で痛みに顔をゆがめていた。ガベンさんは最近学校が夏休みに入り、叔父の農作業を手伝っていた。「野菜を収穫していたら突然爆発が起きて、その後はよく覚えていません」。小さな声でそうささやき、あとは痛みで押し黙った。
イスラエル軍は民間人被害を最小限にするため、空爆の直前には電話やパンフレットで避難を促していると強調している。
だが叔父のアラ・アデルさんらによると、8日午前11時前ごろ、家族ら12人で収穫中に、突然、畑を空爆された。ガベンさんの近くにいた兄(24)は爆発で吹き飛ばされ、集中治療室で手術中だという。「私はハマスの戦闘員ではないし、ましてやこの子はただの学生です」。アラ・アデルさんはそう言って怒りをあらわにした。
ガザ地区は2007年にハマスが制圧。イスラエルは以来、物と人の往来を規制する封鎖政策を続けている。このためガザ側は隣国エジプトとをつなぐ密輸トンネルを作り、安価な食品などを搬入してきた。しかし昨年夏のエジプト政変で誕生した軍事政権にトンネルを破壊され、困窮の度を深めている。