ヨルダン:過激派流入を警戒…国境に特殊部隊派遣
毎日新聞 2014年06月29日 19時58分(最終更新 06月29日 23時53分)
【エルサレム大治朋子】イラクやシリアと国境を接するヨルダンが、イスラム過激派の勢力拡大に警戒を強めている。60万人以上のシリア難民を国内に抱えて経済の悪化が進み、過激派に共鳴する貧困層の若者も増えている。イスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」がイラク西部で制圧地域を拡大させる中、ヨルダンは国境沿いに戦車やミサイルを配備し、神経をとがらせている。
ロンドン拠点のアラビア語日刊紙アッシャルク・アルアウサット(27日付電子版)によると、ヨルダン政府は今月末、イラク国境沿いに特殊部隊を派遣した。ヨルダン政府高官は、イラク側国境は現在軍が掌握しているが、その周辺はISILの支配下にあると明らかにした。
また、米ワシントン・ポスト紙によると、ヨルダンの首都アンマン南方約240キロの町マアンで25日、ISILの旗を掲げた若者らが手製のガソリン爆弾を手にデモ行進。穏健派で知られるヨルダン国王を名指しし「アブドラよ去れ」などと批判した。マアンの失業率は約25%で、平均(約15%)を大きく上回る。
ヨルダンは既に多数のシリア難民を受け入れているが、最近は不法入国も目立ち、ヨルダン国内に流入したシリア難民は100万人以上との推計もある。一部は厳格なイスラム原理主義者「サラフィスト」で、難民を偽装して流入。ヨルダン内部で政府に不満を持つ若者や過激派と連携し政権打倒や混乱拡大を狙う動きを見せているという。また、シリア反体制派に加勢する外国人兵士約1万1000人のうち2000〜2500人はヨルダンのイスラム過激派で、ヨルダン・タイムズ紙によると、その8割が昨年までISILと共闘してきた国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」。最近、一部がヨルダンに帰国しており、政情不安につながる可能性がある。
ヨルダン軍は今春、シリアとの国境付近に初めて空軍を配備。4月、大量の武器を隠し持ち難民を装って国境を越えようとした車両を空爆した。
元駐ヨルダン・イスラエル大使のオデッド・エラン氏は「ISILはイラクで勢力を十分拡大しておりヨルダン進軍の意思はないだろう。仮にISILが攻撃を仕掛けてもヨルダン軍なら撃退可能だ。ただ国内にすでに流入したシリアやイラクからの過激派の存在が治安を悪化させており、国際社会の支援が必要だ」と話している。