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国際
【硝煙の一世紀】(3)覆された中東秩序 軋む「押しつけの国境」
一方で英国の外相バルフォアは17年、戦争遂行にユダヤ人の協力を得るため、パレスチナでのユダヤ人の「民族的郷土」建設に賛成すると言明した(バルフォア宣言)。これ以降、欧州各地のユダヤ人のパレスチナ入植が加速し、現地のアラブ人との衝突が相次ぐようになる。
その裏で英国は16年、仏露とそれぞれの勢力圏を定める秘密協定(サイクス・ピコ協定)を締結していた。戦後処理ではこれに基づいて国境線が引かれ、現在のシリア、レバノン、イラク、ヨルダンといった国々に分割された。
第一次大戦に詳しいデイビッド・フロムキン米ボストン大教授は著作で、「英国をはじめとする連合国は中東の古い秩序を根こそぎ覆した」と総括する。 「国民国家なれず」
1世紀前、列強の草刈り場となったこの地域は再び激震に見舞われている。
内戦が泥沼化したシリアと隣国イラクでは、イスラム教シーア派の政権側と、スンニ派の武装組織が戦闘を展開。両国で勢力を拡大し、イスラム国家建設を目指すスンニ派過激組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」は、目標の一つに「サイクス・ピコ体制の打破」を掲げる。
あたかも「押しつけられた国境」を消し去ろうとするかのようだ。
2011年以降に中東・北アフリカを席巻した「アラブの春」は当初、民主化要求運動と位置づけられたが、エジプトやチュニジアではイスラム勢力と世俗派が激しく争い、リビアでは軍閥が跋扈(ばっこ)する事態へと変容した。
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