「エイズ(後天性免疫不全症候群)の完治が可能」という医療装置が、エジプトで話題になっている。エジプト軍が開発に成功したと主張。この装置を使った患者の治療が始まると発表されている。
医療装置の試験でエイズが完治したと証言する患者の声まで紹介。事実であれば世界を駆け巡るニュースのはずだが、もちろん、そうはなっていない。
それでも、多くのエジプト人が事実だと信じているようだ。エジプトは軍が力を持つ国。カイロでは、軍の“偉業”を称賛する声が上がっている。
だが、大統領府への助言を担当している科学者は、さすがに軍の発表にかみついた。「何の科学的根拠もない。こんな発表は、エジプトのイメージを損なうだけだ」。実際、笑い話として報道した欧米メディアは少なくない。
エジプトでは六月に、軍出身のシシ氏が大統領に就任したばかり。新大統領は今のところ、この医療装置について、何のコメントも出していない。最近知られるようになった「再現実験」についても、「成功した」との報告は今のところ聞こえてこない。 (中村禎一郎)
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