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ひょっとして認知症?

 よく、右脳は芸術・創造性・音楽に深く関与しているという話を聞くと思います。しかし、近年の考えでは、「右半球は創造的で芸術的半球であるとする考え方は、左半球と右半球の機能分化を研究するにあたっての仮説として提唱されただけの古い理論に過ぎず、その後の研究は、この初期の仮説を支持していない」(ダーリア・W・ザイデル:芸術的才能と脳の不思議-神経心理学からの考察 河内十郎監訳, 河内薫訳, 医学書院, 2010, 前書きxiより)ことに留意する必要があります。

 高田明和先生の著書には、「脳梁を切断された患者さんでの検討から、右脳は、簡単な言語、立体構造、およその構図の理解、言語を使わなくてもよい概念(喜びの顔の理解など)に優れており、左脳は言葉や計算、細かな構図の理解に優れていました。」(高田明和:脳トレ神話にだまされるな 角川書店, 東京, 2009, pp90-98)という記述があります。

 さて、左脳の損傷で失語症になる確率は、女性の方が男性よりも低いことが報告されています。

 いったいこれはどういうことでしょうか。

 東北大学大学院文学研究科の小泉政利准教授は、物語聴取時の脳活動の男女の違いに関する以下のようなデータを紹介しています(村上郁也:イラストレクチャー 認知神経科学 ─心理学と脳科学が解くこころの仕組み─ オーム社, 東京, 2011, p103)。

 「健聴者が物語を聴取しているときの脳活動を同じ物語を逆向きに再生したものを聞いているときの脳活動と比較した研究では、男性は左脳だけに有意な活動が見られたのに対して女性は左右両側に活動が見られた。このことから、男性は主に左脳に依存して言語処理を行っているのに対して、女性は両側を活用していることがわかる。」

 さて、「単語の意味判断課題」では、男性でも女性でも左脳だけが活動します。一方「朗読」においては、男性は左、女性は両側の側頭葉を使って聞くことが分かってきました。これに関して順天堂大学医学部生理学第一講座の北澤茂客員教授は、「右側の側頭葉は声の抑揚の解析や連想などの非統語的な言語関連機能に関与しているとは古くから指摘されているところである。相手が口にする字面だけでなく、話をするときの声の調子に気を配るのに役立つのが右の側頭葉である。実際、女性は男性に比べて、話の内容と声の調子の不一致に敏感であるという報告もある。」(北澤 茂:脳神経科学と性差. 遺伝 Vol.65 53-58 2011)と述べています。

(つづく)

笠間睦 (かさま・あつし)

 1958年、三重県生まれ。藤田保健衛生大学医学部卒。振り出しは、脳神経外科医師。地元に戻って総合内科医を目指すも、脳ドックとの関わっているうちに、認知症診療にどっぷりとはまり込んだ。名泉の誉れ高い榊原温泉の一角にある榊原白鳳病院(三重県津市)に勤務。診療情報部長を務める。
 認知症検診、病院初の外来カルテ開示、医療費の明細書解説パンフレット作成――こうした「全国初の業績」を3つ持つという。趣味はテニス。お酒も大好き。
 お笑い芸人の「突っ込み役」に挑戦したいといい、医療をテーマにしたお笑いで医療情報の公開を進められれば……と夢を膨らませる。もちろん、日々の診療でも、分かりやすく医療情報を提供していくことに取り組んでいる。
笠間睦さんインタビュー記事

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