中国報道官、中越戦争で質問受け回答を拒否・・・「大国も小国も平等」の原則論に終始


 中国政府・外交部の華春瑩報道官は12日の定例記者会見で1979年の中越戦争に関連する質問を受け、回答を拒否した。「大国も小国も平等」などとする原則論の説明に終始した。  記者から「すでに35年になりました。中国は現在でも、ベトナムのような小国が中国を叩いたと宣伝しています。中国はこのような宣伝を改めてもよいとは思いませんか」との質問が出た。  「すでに35年」とは、中国が1979年にベトナムに侵攻し、多大な損害を出して撤退した中越戦争を指す。中国は同戦争について、ベトナムがカンボジアに侵攻して、反ベトナム政権を崩壊させたことに対する「懲罰」と説明。現在でも「対ベトナム自衛反撃戦」と称している。江沢民国家主席(当時)が2002年にベトナムを訪問した際などに、中越戦争について謝罪を求められたが、「ベトナムのカンボジア侵攻によるものだ」として拒否。「ベトナムに侵攻はしたが侵略戦争ではない」との立場を貫いた。江主席は「もう過去のことは忘れ、未来志向で両国関係を築くべきだ」などと主張し、ベトナムで使用している教科書から、中越戦争についての記述を削除するよう求めた。  中越戦争に関連する質問に対して華報道官は、「あなたがそのような質問をする背景と意図が分かりません。あなたが言うような報道や評論は見たことがありません」と、直接の回答を避けた。  華報道官は続けて「中国は国際関係において、大小の国家はすべて平等だと主張している」などと説明した。  中国は公式には「すべての国は平等」とする平和五原則を順守している。ただし、自国と米国について「新たな大国関係を構築」と表現するなど、自国を「大国」として、特別な立場にあるとの主張を強めている。また、「大国から強国へ」との言いかたもよくする。  さらに、中国共産党機関紙の人民日報系ニュースサイト、環球網は5月15日付の記事でベトナムで発生した反中暴動を非難する記事で、「街中であのようなふざけたことを中国のような大国に対してすれば、遊びではない結果になる」、「お前が本当に“発狂”しており、最後の限界が分からないというならば、最終的に中国からどのような仕打ちを受けるか、覚えておくがよい」と、自国とベトナムの立場を事実上、「大国と小国の関係」と決めつけた。 ********** ◆解説◆  中越戦争はベトナム戦争後のベトナム・カンボジア関係の悪化が原因になった。中国は、毛沢東主義を信奉し、自国民の大量虐殺を行うなどで国際的に強く非難されていたカンボジアの極左ポル・ポト政権(クメール・ルージュ)を支援。ポル・ポト政権は同国内のベトナム系住民を迫害したので、対ベトナム関係が悪化した。  ベトナムはカンボジアに侵攻し、ポル・ポト政権を首都、プノンペンから駆逐。親ベトナムのヘム・サムリン政権を樹立した。ベトナムは自国内の華僑資本家を圧迫していた。  中国は「懲罰」と称してベトナムに侵攻。しかしベトナム戦争でゲリラ戦を含めて多くの実戦経験を積み、装備にも優れたベトナム軍に苦戦し、多大な損害を出して1カ月足らずで撤退した。ベトナム軍主力はカンボジア方面に出動しており、中国はベトナム側の「隙」をつく形で進行した。ベトナム軍主力が中国軍に対応するために引き返して集結を始めたところで、中国軍は撤退した。したがって、中国軍とベトナム軍主力の交戦は、事実上なかった。(編集担当:如月隼人)