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野々村竜太郎議員の不正に思う ―政治家に複式簿記を導入すべき

野々村竜太郎県議が議員辞職すると報じられていますね(7/11午前時点)。

政治活動費の不透明な支出がなぜ起こるのかといえば、もちろん政治家自身の倫理観の欠如も原因ですが、別の問題もあります。政治家の決算書が単式簿記の「収支計算書」であり、複式簿記での「貸借対照表」「損益計算書」を作成していない点です。

私は、政治資金監査人として、国会議員の「収支報告書」の監査をこれまで数年間にわたって実施してきました。

この政治資金監査とは、どのようなものかを簡単にざっくりいえば、
  ・収入は、監査対象外
  ・支出のうち、人件費は監査対象外
  ・その他の支出のうち、一定金額以上のものについて領収書と突合
  ・但し、支出の使徒は問わない
  ・オフバランスも監査対象外
  ・預金残高については、確認状の発送もしない
というもの。

つまり、「監査」と名前が付いているものの、「監査」でもなく、「レビュー」でもありません。このような制度に対して「監査」という名称を付すことを、本来は日本公認会計士協会が許容するはずがありませんが、政治資金監査人は公認会計士のみならず税理士もなれますから、政治的な圧力があったのだと思います。日本公認会計士協会が妥協したのです。情けないですね。

さて、国会議員に関していえば、外部の政治資金監査人による「監査」を受けなければなりませんが、その「監査手続」は、上述のとおり、「一定金額以上の支出について領収書と突合するのみ」です。

ということは、一定金額以下の支出については、外部の人間にとやかく言われることもないわけです。さらに、領収書を収支計算書に添付する必要もないわけです。架空経費(架空支出)を計上しようが、私費を計上しようが、政治資金監査人が何かいえる立場ではないのです。支出の使徒は問いませんから。

ですから、この制度を悪用して、政治活動費を懐に入れることはメチャクチャ簡単なことなのです。

政治家の不正・不祥事は、政治資金監査ではなく、マスコミの取材や収支報告書の閲覧などにより明らかになるものが大半だと思いますが、明らかになっているものは氷山の一角に違いありません。

政治資金監査を受けなければならない国会議員でもザルですから、政治資金監査も受けず、マスコミからの監視も薄い県議があのような不正を行うのは驚くことでも何でもありません。似たようなことをやっている人はきっといるはずです。

私は前から何度も言っているのですが、このような政治家による不透明な支出を防ぐためには、一刻も早く、複式簿記を導入すべきだと思っています。

複式簿記を導入した上で、(少なくとも国会議員には)公認会計士による法定監査を導入し、貸借対照表・損益計算書・監査報告書を公開すべきです。できれば、政治活動費の使徒が分かるようなキャッシュ・フロー計算書も開示すべきでしょう。
今の政治資金監査は監査ではありません。だいたい、金融庁ではなく総務省が管轄している時点でおかしい。複式簿記を導入した上で、会計監査のプロである公認会計士が、民間企業と同じレベルの監査手続を実施すれば、今般起こっているようなレベルの政治家による不透明な支出は撲滅できるはずです。

国民のカネを預かって運用しておきながら、貸借対照表も損益計算書も作成しないということの異常性を放置していたら、野々村問題どころか、小沢問題、猪瀬問題、渡辺喜美問題が今後も起きるはずですよ。

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