政務活動費(政活費)の不自然な支出について、説明責任を果たさぬまま11日に兵庫県議を辞職した野々村竜太郎氏(47)。一方、わずか2日前に本人への再調査に乗り出した県議会は「権限に限界がある」として、異例の刑事告発に踏み切った。1日の「号泣会見」で全国的な注目を集めた問題は、あまりにも早い“幕引き”となった。
11日の会派代表者会議で野々村氏の辞職が報告された県議会。会議後に会見に臨んだ松本隆弘副議長は「説明責任をまったく果たさない。議員としてあるまじき対応だ」と野々村氏への怒りをあらわにした。
県議会事務局によると、野々村氏は1日の会見に対する批判を受け、一時は憔悴(しょうすい)しきった様子だった。9日と11日の事情聴取も「不測の事態」を考慮し、県議会登庁を拒む野々村氏の意向を尊重して外の施設で実施した。
ところが、11日午前11時15分から始まった調査には、野々村氏は淡々とした様子で姿を見せた。「(遠方訪問の)195回は間違いなく行った」「切手の換金や備品の転売はしていない」などと従来の主張を繰り返すばかりだったという。
事務局が準備した辞職願にもあっさりと署名、押印。担当職員が「誠意のある対応をしてもらったとは思っていない。大変残念だ」と伝えると、黙ってうなずいたという。調査の中では、これまでに受け取った政活費計約1800万円について「一括で全額返納できる」と開き直るような発言もしている。
一連の問題では議会も大きなダメージを負った。6月30日以降、事務局などに寄せられた苦情や抗議は約5千件。ほとんどが野々村氏に対するものだが、問題を見過ごしてきた議会への批判も少なくない。
この日の会見でも「議会としての調査が不十分なのになぜ辞職を許可したのか」など、早々に調査を打ち切った議会の姿勢を疑問視する声が報道陣から相次いだ。
来春には、県議選を含めた統一地方選が迫る。議会はこの日、政活費のあり方を見直す検討会を設置し、議長の調査権限強化などを進める方針を明らかにしたが、信頼を回復できるかどうかは未知数だ。(三木良太、岡西篤志)
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