◇阪神12−5巨人
巨人−阪神 6回表1死二、三塁、2点二塁打を放ちガッツポーズする代打・西岡=東京ドームで(戸田泰雅撮影)
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阪神が7年ぶりの8連勝で2位に浮上した。2−2の6回にゴメスの適時打とマートンの適時二塁打、代打西岡の2点二塁打で4点を勝ち越した。その後も3本塁打などで加点した。メッセンジャーが7勝目。巨人は大竹が崩れた。
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3月30日、東京ドームのグラウンドから救急搬送された阪神・西岡。あの日から3カ月半。背番号7が、敵地を大歓声で揺るがした。中堅への2点適時二塁打。復活のシーンは、筋書きのないドラマだった。
場面は6回。4連打で2点を勝ち越し、なおも1死二、三塁。ここで今成に代打・西岡が告げられた。球場全体からわき起こる拍手と大歓声に迎えられ、打席に入った背番号7。これ以上の失点は防ぎたい巨人ベンチも、カウント2−2となったところで動いた。
左翼手の亀井を内野に入れて5人体制にし、右中間と左中間に外野手を配置する奇策。球場全体が異様な空気に支配される中、迎えた6球目だった。「意識したら術中にはまる。無心で行った」と136キロの直球を振り抜くと、打球は無人のセンターへ飛んだ。
シフトをあざ笑うかのように、ど真ん中を破って2者が生還。二塁に到達した西岡は、何度も両手をたたいた。「普通だったらあの場面は関本さん。使ってくれた監督の期待に応えたかった」。ベンチに、そしてファンに感謝の思いを伝えるために突き上げた左腕は、あの日のシーンとだぶって映えた。
「なんであの時、左腕が上がったのか今でも不思議。病院ではまったく動かなかったのに…」。衝突の直後、鎖骨と肩をつなぐ関節は完全に脱臼していた。それでも救急車に乗り込む直前、両軍ファンからわき起こる声援に、動かないはずの左腕が上がった。「人間の力ってすごいんやなと思った」。あの声援があったからこそ、苦しいリハビリも乗り越えられた。
「支えてくれて、背中を押してくれた野球ファンに感謝したい」と思いを伝え、スタンドへ一礼した西岡。誰もが待ち望んだ男の復活が、7年ぶりのチーム8連勝を生み出した。 (重松健三)
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